「元希ー!」

眩しい日差しの中、俺を呼ぶ彼女が可愛くて仕方なかった。彼女は大げさに手を振って、片手には楽器を持っている。

「おほん、それでは名前コンサートを初めます!」
「観客俺しかいねーけど」
「うおっほん!それでは一曲目から〜…」

ばっ、と楽器を構える姿は本当に凛々しいと思う。そう、今日は彼女にヴァイオリンを弾いているところを見せてもらう日、もといデートのような日だ。初めて見た彼女のヴァイオリンを弾いてる姿はまあ、想像していたよりも良かった。トランペットもいいけど、ヴァイオリンもいいな。

「はーい。次はアップテンポの曲なので手拍子おねがいしまーす!」
「ヴァイオリンに手拍子とかあんの」
「ちょっと憧れてて…!よろしく!」

あ、始まった。つーかこの曲どっかで聴いたことあんな。
さっきから演奏する曲は、まあ俺も聴いたことがあるだろうという曲ばかりで、もしかして俺のために曲厳選してきてくれたのか?って思ったら自然と口元がにやけた。ほんと、こいつかわいいよな。初めて会った時から、天使かと思った。空から落ちてきたのかと、なんてポエマーになってみるけど、実際空からなんてあの映画ぐらいしか出てこない。それくらい変な出会いをしたんだ俺たちは。まあそれで俺もこいつのことを好きになったんだけど、よ。

「いいぞー名前」
「ありがともときんぐ〜次はラストでーす!」

そして弾いたのは、俺がバッターの時に流れた曲だった。確か、あの時代劇ドラマの…。ヴァイオリンで弾くとまた味があるな。

「どうでしたでしょうか私のコンサートは!」
「めちゃくちゃよかった」
「いやんありがと!」

大げさに照れた真似をして、楽器をケースにしまいがばっと俺に抱きつく名前。こいつは付き合ってからとにかく抱きついてくるようになった。そんで、スキンシップも、まあ、多いというか…。

「どしたの元希」
「…や、なんでも」

こいつの胸があたって、心臓ばくばく言ってるし、まだ昼間だというのにまあムラムラしてしまうわけだ。Tシャツにチェックのシャツを腰巻して短パンを履いたその格好は今時を感じさせ、そして魅力的だった。
ぐっと抱きしめるときゃー、なんて言って寝っ転がった。幸いここは芝生だったからよかったけど、普通の地面だったらかなり痛かったところだ。

「ねえねえ、どうだった?私のヴァイオリン弾く姿はー」
「惚れ直した」
「ほんとー?嬉しいな〜えへへ〜」

ごろごろと転がるように俺を抱きしめたまま動き、すりすりと俺の胸板に顔を猫のようにこすりつけた。あ、なんか可愛い。

「好きだー元希ー」
「俺も」
「だから今度試合見に行くね」
「じゃあ俺もコンクール?見に行くわ」
「ばーか!練習してろ!」

ぐりぐりと人差し指で頬を押され、やりたい放題されてる俺は、ごろりと転がり名前に馬乗りになっているような状態にした。

「こっから俺のターン」
「えっ、ええ!」

頬にはっついた髪を分け、少しだけ頬に触れる。あ、顔が少し赤くなった。本当、俺にとっては天使そのものなんだよな。これからも大事にしていかねーと、な!

20151002


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