岩泉と付き合えたことが嬉しくて、恋人アプリなどを入れたりなどあたしは浮かれていた。唯一の岩泉の写真(盗撮)はロック画面から外した。だって、これからいつ見られても不思議じゃない…!考えて考えた挙句、カメラロールでたまにムフフと微笑むようにした。カメラロールまで見るような人じゃないから、岩泉は。もっと写真増やしたい…。そして今、友達からもらった岩泉の写真(及川君メインの写真で岩泉はすごく小さい)でニヤニヤしています。大丈夫、ちっさくても!拡大できるしね!画面に岩泉が写っているだけでも幸せになれる!LINEで友達にまたあったら頂戴、と送ってまたあの写真へ。うふふ、と今あたしには幸せオーラが出ているだろう。

「はよ」
「あっおはよ」

ぱっと携帯の画面を隠しながら岩泉に挨拶した。相変わらずタイミングがいい。中身見られたら死ぬところだった。

「まーたイケメン見てニヤニヤしてんのか」

はあ、と呆れたように言う岩泉が今日もかっこいいなー、と思いながら「まあね」とだけ返した。何度も言うけど間違ってないもん!岩泉はイケメンだから!男前だから!間違ってないから!岩泉はあたしを一瞥して席についた。イスを少し前に押して、あたしのほうを振り向いてはくれない。…え?岩泉、もしかして怒ってる?な、何で?あたし何さたかな?それとも朝から嫌なことあったのかな…。そ、それをどうにかしてやるのが彼女の仕事だよね!よ、よーし!勇気を出して話しかけるんだ、あたし!

「岩泉っ」
「岩ちゃーんちょっと来てー」

お、及川…!お前は、今のあたしの勇気を見なかったのか…!なぜそうもあたしの前に立ちはだかるの?あたしのこと嫌いなの?くぬぬと下唇を噛み締めながらその光景を見つめる。ぎゃははと笑う及川に岩泉はばしっと叩いていて、もうなんかその後ろ姿もかっこいいなって…ほんと重症。
話が終わったのか戻ってきて、あたしと目が合った。だけど岩泉はあたしから目をそらして席についた。やっぱり後ろには向いてくれない。
…ひょっとしなくても、あたしが何かした感じ?あたしが悪い?え、待って。それ凄いやばいやつじゃん。え?あたしが…。
あたし岩泉に嫌われた!?嫌われてしまったの!?待って、待って待ってそれはやばいって。まだ付き合って数日しかたってないのにもうこんなことになるの?だめじゃん!こんなんじゃやっていけるわけないじゃん!とにかく、とにかく謝んないと…いやでも何が悪くて謝るのかがわかんないし…もしあたしが悪くて何が悪いか分かってんの?って聞かれたら答えられる自信はない。あああ、でもこのまんまじゃっ…と、とりあえず話しかけよう。そうしよう。

「い、岩泉ー…」
「んー」
「……お、怒ってる?」

ビクビクとしながら岩泉に話しかけると、間延びした返事だけで振り返ってもくれない。しかもその問いには中々答えてくれず、あたしもたじたじだ。それでもあたしは待った。きっと何か言ってくれるであろうと!岩泉はそれでもあたしのほうを向かなかった。

「俺に話しかけるよりイケメン見てたほうがいいんじゃねーの」

そう、ぽつりと呟いて。
あたしはぽかん、と岩泉の後ろ姿を見つめた。

「…そ、それって」

口に出すのもおこがましいことだけれど。小さく「ヤキモチ?」と聞くと、岩泉はぴくりと反応した。あたしはがたりと席から立ち上がり、岩泉の前の席まで歩いた。くるりと振り返り、ぱっと目が合うと、恥ずかしそうにそらす岩泉。

「…岩泉」

岩泉、あたしのことちゃんと好きなんだね。そういうことだよね?その顔が赤い理由は、あたしにあるんだよね?

「……お前がイケメン見てニヤけてるからイラついた。そんだけだ」

かっこ悪ぃ、と頭を掻く岩泉に、あたしは胸の高鳴りを抑えることができなかった。
どうしよう、好きで、好きで、好きすぎる。

「別に見んのは自由だけど…惚れんなよ」

俺以外のやつによ、と。
あたしは言葉を発することができなくて、ただ口を開けて岩泉を見つめることしかできなくて。この沈黙に岩泉はしびれを切らしたのか「だー!もうこの話は終わりだ!」と顔が真っ赤のまま席をたってロッカーのほうに歩いて行った。

「…だいっすき…」

ゆるゆるになった口元を隠すように手の甲でおおった。
あたしは最初っから岩泉しか見てないよ。他の人に惚れるわけないじゃん。もっと、もっと岩泉のこと好きになるよ、これからもずっと、あなただけに重症なんだから。


20151005





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