あたしが廊下に出ると、東峰君は待っていたのかあたしの方に歩いてきた。そのへにゃってした笑顔も、好きで仕方ない。
「おはよう東峰君」
「おはよ」
そう言って彼は眠そうに欠伸をした。そんなとこも可愛くて、クスリと笑った。
「もうすぐ公式戦なんでしょ?がんばってね」
「うん、見に来てくれるんだっけ…」
「行くよ。女バレのほうも見たいしね」
二カッと笑うと、東峰君は嬉しそうに笑った。ふふふ、エースかあ…。きっとスパイク打つ時の東峰君かっこいいんだろうなあ。打つ姿目に焼き付けとかないといけないな。
「じゃあ苗字さんが来るから、がんばんないとだ」
そう言って後ろ髪を掻く東峰君にきゅんと胸が高鳴った。
あたしのために、がんばってくれる…そんなの、嬉しくてたまらないじゃない。
「…なんか、照れる」
初々しい反応、治んないかなあ。頬が少し熱くて、きっと身長差で見えないんだろうけど、それでも恥ずかしかった。
「…ちょ、待って、俺も照れてきた」
その言葉にこの場所から離れたいと思った。二人して照れてどうすんのよ!本末転倒じゃない!あの冷やかし二人組に見つかる前にどうにかしないと…!とキョロキョロと辺りを見渡したら。
「朝から熱いね〜二人とも!」
来た。にっこり笑顔で泣きぼくろが特徴的なやつと、とにかくお父さんて感じのあいつらが。ギギギ、と顔を動かすと、そりゃまあ笑顔で。あたしと東峰君をニコニコと見ていた。
「ひっ…」
「ひげちょこはもうちょい顔に見合った表情した方がいいんじゃないのか?」
「それ悪口…」
ニコニコと笑いながら東峰君にぽんと肩を叩く澤村をじっと見ていた。タイミング良すぎじゃない?この人。
「ちょっ、ちょっと澤村。東峰君困ってるから…」
「あ、苗字〜いい事教えてやろうか。東峰この前さ〜」
「ちょっスガっ!」
「苗字と帰ってる時にがんばって手繋いでみたらー」
「おい!」
「めちゃくちゃ照れててーほんとあの時の反応がさーって」
「やっやめろ!」
必死に止めようとしてるけど、全然止めれてなくて、全部聞こえてしまった。きゅっと下唇を噛んで、あたふたしてる東峰君を少し睨みつけた。
「あたしのことバカにしてたのっ…?」
あたしの知らないところで、あたしのことからかってたって、遊んでたって言うこと…?東峰君はぎょっとして菅原君から離れて「ちがう!」と焦りながら言った。
「…か、…可愛かったんだよ…」
言ったあと、カアアと顔を赤くさせてあたしを見て、あたしまで顔が熱くなった。
そんなこと、そんなこと照れて言わないでよ。だからあたしもこんな感じになんじゃん。
「初々しいねー」
ケラケラと笑いながら言う菅原君と澤村に東峰君は「あっちいってろ」と二人の背中を押した。「はいはい」と二人は行ってしまったけど。
「そ、そんなこと思ってたんだ…」
「…うん…」
何か嬉しいような恥ずかしいような変な気持ち。でもあの二人に言ってるなんて、冷やかされるもとなのに。そんなに言いたかったのかな。
「…じゃ、じゃあまたねっ…」
すっかり時間もたってもうすぐ休憩時間が終わってしまう。東峰君はあたしを引き止めて「今日体育館の点検で部活無いから、一緒に帰ろう」と言ってくれた。とりあえず、あたしもあの時の反応が、と潔子ちゃんに言ってみたいから今日は名前を呼んでみようと思う。
20151004