昔、とある男子にいじめられていたことがある。小学生の頃だけど、服の中に虫を入れられたり、給食で嫌いなおかずを多目に入れられたり、鬼ごっこで私を必ず鬼にしたり、かくれんぼしても鬼にして絶対見つけれないところに行くか私だけ見つけないか。そして普通に悪口を言う、みたいな。昔の私はまあ泣き虫で。泣きながらてっちゃんに助けを求めると、てっちゃんはその男子にゲンコツという制裁を加えて、「名前をいじめんな!」と怒ってくれた。私にとってはガキ大将みたいな感じで、今思えばそうなんだけど昔の私はなんというか。
「王子様みたい!」
と考えてしまったのだ。その男子は後日告白してくるのだが私は大嫌いなのでこっぴどくふってしまった。今思えば好きな子ほどいじめたくなるってのは本当にいたんだな、としみじみ思う。それでもその男子は嫌いだけど。そして高校に入って、改めて思ったこと、それは…。

「てっちゃんって私の王子様なのかなあ」
「……名前がそう思うんなら、そうなのかもね」
「じゃあ絶対王子様だよ!ていうか前世が王子様だったんじゃないの!?」
「…う、ん」

研磨は私と一緒にてっちゃんを待ってくれている。顧問に呼ばれたから少し待ってろと言われ待っていたら研磨が来たので来るまで一緒にいることになったのだ。

「ね、研磨も一緒に帰ろうよ」
「…や、いいよ。イチャイチャしてる隣にいたくない」
「えー?もう、研磨ったら!」

ばん、と肩を勢いよく叩く。そんな、てっちゃんとイチャイチャなんて、まあしてるけど!イチャイチャしたくてたまらないからね、私が!毎日抱きついてるけどね〜。最近は抱きしめ返してくれるんだよなあ、てっちゃんは。

「うふふ、ふふふ。てっちゃんまだかなあ…」
「うわ、すごい気持ち悪いよ名前」
「黙りなさい研磨!」

全くもう、研磨は…!ぶーぶー文句を行っていると、人影が見えた。

「……あ、リエーフ君だ!」
「あ、苗字だ!」

リエーフ君と私はクラスは違うがSNSで知り合ったのだ。ノリがよくてなんとなく似てるという印象を友達はうけているらしく、そんな感じで私も何か似ているものがあるなと感じている。

「いえーい!いえーい!いえーい!」

アメリカ式のhand shakeをお互いして、二人で盛り上がる。身長差あるのにそれを感じさせない仲の良さ、すごいと思う。それを研磨は引いたような目で見ていた。

「…俺帰る」
「ええ!研磨!」
「じゃあね」
「お疲れっした!」

リエーフ君はくるりとあたしのほうに向きを変えて、「誰か待ってんの?」と聞いてきた。

「うん、待ってるよ」
「誰々?」
「黒尾先輩」
「あ、幼馴染だもんな!」
「うふふ、それだけではないのです…」

ニヤニヤとしながら顔をあげる私。首痛いからどっかに座ろうよ、と提案して体育館の方の階段に座った。

「で、なんなの?」
「ふふふ、私と黒尾先輩はなんと、付き合っているのです…!」
「うそ!?ガチ!?」
「ガチガチでんがな〜」
「まじかよ、じゃあ夜久さんがいっつも茶化してんのはお前のことだったのか…」
「なんのこと?」

頭にハテナマークを浮かべながらリエーフ君に聞くけど、リエーフはいや、なんでも!とにぱっと笑って教えてくれなかった。なんなんだ、もう…ていうかてっちゃん遅い!

「ていうか…お前と黒尾さんとか」
「な、何よ」
「いやー、別に。あわねーんじゃねーの」

は!?合わない!?リエーフ君ってそんなこと言う子だったの…!?私は立ち上がってリエーフ君を睨みつけた。

「ばか!リエーフ君のばか!」
「そ、そんな怒んねーでも…」
「私はてっちゃんに似合う女になりたくて日々努力してるのに!」

てっちゃんはとにかく身長が高いから高くなるよう牛乳とか飲んで早く寝てるし。少しでも大人っぽくしようと静かにしようと心がけてる。それでも先輩方からあの子が?って笑われたらへこむけど、でもあたしはてっちゃんの隣に『幼馴染』としてじゃなくて『彼女』としていたいから。だからあたしは日々努力してるのに…!

「ま、まあ黒尾さんはいいと思うけど、お前には俺みたいなやつのが似合う、気がする、けど」
「リエーフ君みたいな人とはきっといつまでたっても友達どまりだよ!」
「ガーン!」

なんかショックを受けさせてしまったけど、私のほうが受けてるに決まってる。だってあわない、なんて。凄く、凄くショック。リエーフ君は立ち直ったのか「だいたいなあ」と話を続けた。

「お前みてーなうるせーやつ妹としか思われてねーよ!」
「そ、そんなわけ…!」
「そんなわけねーだろ」

低い、いつも聞いている声にあたしは声のするほうにふりかえった。…て、てっちゃんだ…!私はてっちゃんのほうに走り出して勢いよく抱きついた。後ろで「ひえっ」という声が聞こえたけどもう気にしない。

「すまん、遅くなった」
「全然いいよっ」
「ん、リエーフあんまりこいつ虐めないでやってくれ」

てっちゃんはあたしの頭を撫でながらリエーフ君に優しくいう。「……はい」と少ししょぼくれたような声を出すリエーフ君にへーんざまあみろ!あわないとか言った罰だ!なんて思いながらくすくす笑った。くるりと後ろを向いてリエーフ君に「ばいばい」と手を振って、そのままてっちゃんの手に絡めた。最近は帰る時はずっと手を繋いでいる。

「てっちゃんはやっぱり王子様だっ」
「は?なんだ、急に」
「ううん、なんでも!」

鼻歌を歌いながら、少し長くなった髪を揺らして少し大股で歩く。そうやって、さりげなく車道側を歩かせないてっちゃんも素敵。

「お前リエーフと仲良かったんだな」
「うん!…やきもちやいた?」
「…んー、ちょっとだけ」
「!」

それが嬉しくて、私はてっちゃんにぴとっとくっついた。「なんだよ」って少し照れた風に聞くからくすりと笑った。

「だいすき!」

てっちゃんは私の王子様だ。だとしたらリエーフ君は何だろう。てっちゃんにヤキモチをやかせた恋のキューピッド!?わあ、なんて素敵なんだろう!
てっちゃんは「俺も」と私の頭を撫でた。私、頑張る。てっちゃんとお似合いって言われるような女になるから。だからその時まで、助けてね、カミサマ!

20151002


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