京治は、何かとモテる。
バレー部の副主将っていうのでモテたりもするし、普通に外見…ていうか、何か身長が高くてかっこよくみえるみたいなことをよく聞く。身長低くてもかっこいいし、と私はぼやいたのを思い出した。

「名前手止まってるよ」
「あっ…はい」

京治…今日もかっこいいな…。待って、どうしようかっこよすぎて仕事が手につかない…はっだめだだめだ。部活に支障がないようにしなきゃいけないのに…。ああ、でも見てしまう。あっ今のかっこよかった!…こんなこと考えちゃ駄目だ、洗濯に行こう。


「お前、また見られてたな」

横でちょいちょいと腹をつく先輩にはぁ、とため息をついた。「もうあげませんよ」と言うと「うわぁごめんって!」とあたふたする。全く、調子がいいんだから困る。

「それにしても、お前らちょっと仲良すぎね?」
「……」
「休憩時間とか最近殆んどアイツと喋ってねーか?お前ら違うクラスだろ?」
「そうですね」
「毎日一緒に帰ってるし?」
「そうですね」
「部活ない日とか会っちゃってんだろ?」
「まあそうですね」
「お前めっちゃ愛されてんな〜」

ギャハギャハと笑う先輩を横目に俺は練習を再開した。全く、この人はどこまでもからかってくる。凄くめんどくさい。
確かに、名前は付き合ってから凄くデレデレになった。凄く分かりやすくもなったし。京治、京治、と俺の名を呼ぶ名前は可愛いと思う。居残り練習をするときでさえ待ってくれるし、少しでもチャンスがあれば俺と一緒にいようとしてくれる。…まあ、たまにそれがうざい時もあるけど俺って愛されてるんだな程度のことではあった。だけど、最近はそらがさらに多くなった。休憩時間は殆んど会いに来るし、隙あらばと言った感じでもうべったり。付き合うってこんなもんだと思っていたけど、最近は…少し…。

「愛されすぎて不安、ってやつです」

ぽつり、そう呟くと木兎さんはギャハハハと爆笑し始めた。何だ、こっちは本気で悩んでいるのに、それを笑い飛ばすなんて。

「そりゃあ贅沢な悩みだな」

ヒーヒーと言いながら笑いすぎて泣けてきた目をこすった。贅沢な、悩み。…まあ、そう言われるとそうなのか…?



それから練習も終わり、いつものように名前と帰る。今日も名前は嬉しそうだ。なんかそういうのを見たら、変な気持ちになる。なんというか、好かれてるなーってのは凄い分かるし、こっちまで嬉しくなるというか…。

「どうしたの?」
「え」
「何かすっごい顔してたよ」

変なのー、と笑う名前。あ、駄目だ可愛い。「うるさい」と軽く頭を叩いたら、「いったーい可愛い彼女を叩くなんてサイテーですよ赤葦君」なんてクスクスと笑うので、そんなところも可愛いなあと思ってしまう。…待って、俺も相当じゃないのか、これ。

「もう駄目だな…」
「何が何が?」
「お前には教えない」

何それ!ってぶーぶーいう彼女を横目に俺はため息をついた。贅沢な悩み、その意味が分かった気がする。そんなこと言いながらも彼女が好きすぎてたまらないんだから、悩みなんていえたもんじゃない。とりあえず、愛されすぎて不安、何て贅沢な言葉なんだろう。隣を歩く彼女が愛しすぎてたまらなかった。


20151009


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