「くっ国見くんっ…何で先に行っちゃうの…」
「お前がチンタラしてるからだろ」
彼女はのろまという言葉がよく似合う。何をするにもとろいのでいつも待ってあげなきゃいけないんだ。全く、待ってあげる身にもなれよ。
「国見君最近いつにも増して冷たくなった…」
ちょい、と俺の袖を引っ張る彼女に俺はきゅんと胸が高鳴った。全く、朝から可愛いことをしてくれる。
「別に。お前がのろまじゃなくなったら優しくしてあげてもいいよ」
「のろま…」
酷い。としゅんとなる彼女。こうなったらめんどくさい。いちいちそんぐらいでしょげるのやめてほしい。いつも言っているのにその度にそんな反応するからますますいじめたくなるんじゃん。
「泣きそうな顔も中々ブサイク」
「うっ…」
うるうると涙目で俺を見つめる彼女。あ、その顔可愛い。言わないけど。きゅんきゅんと胸が高鳴りながらも俺は平常心を貫く。
「国見君の意地悪っ…ばか」
「ハイハイ早くしないと集会間に合わないんだけど」
月一の朝会。今体育館に行っている途中で。ぷりぷりと怒る彼女をあしらっていたら、たった今体育館の前についた。かなりの人数がそこにいるので凄く混んでいる。後ろを振り向くとすぐそこにいたのでとりあえずほっとした。朝会で、俺と彼女は座るところが隣同士なので行くのも一緒。まあ隣じゃなくても一緒に行くけどさ。隣で歩く彼女の指に軽く指を絡めた。
「…人がいるところではそういうことしないんじゃなかったの」
「たくさんいるし、バレないじゃん」
何それ、せこいよって彼女は嬉しそうに呟いた。後ろから押されたのか彼女が俺の背中に抱きつくように寄りかかってきた。「ご、ごめん」と慌てて離れた彼女にちょっとだけムッとする。いつもお前からくっついてくるくせに。
「…国見君身長伸びた?」
「測ってないからわかんね」
「きっと大きくなってるよ」
「お前はチビだよな」
「もう、私のことはいいよ…」
小さくて可愛いなんて最高じゃん。お前が身長高くなったのなんて想像したくない。ちっさいまんまでいいし。小さい体で俺の歩幅に合わせようとするところとか、小さい体で俺に抱きついてくるとか、背伸びして俺にキスしようとするところたか本当、あの可愛さと言ったら誰かに惚気たいくらいだ。
今だってめちゃくちゃに抱きしめたいし、この繋いだ手を離したくない。だけど仕方ない、ここは学校だから。ぱっと手を離して歩いていく。それを追いかける彼女。本当、後ろからがんばってついてくるところとか、可愛すぎるんだよな。
「このあとなんだっけ」
「世界史」
「じゃあまた移動だね」
といって、人を避けようとしてぶつかる彼女。本当、鈍臭いなあ。
「名前」
ぐいっと腕を引っ張ると、「ありがとう」と小さくなる名前。とりあえず、泣きそうなこいつに頭を撫でてやることにした。
20151009