ぎゅっと手を握り締める。そうだ、今日こそ、今日こそ田島に話しかけねば…!今起きてるし、一人だし、これはあたしが行くしかないんだ…!泉にアイコンタクトをとって、ゆっくりと一歩ずつ歩き出す。ふー、大丈夫、大丈夫だあたし!

「たじ」
「原田〜」
「なに!」

ぐりんっと涙目になりながら振り返る。今、今あたしは田島に話しかけようとしたのに!見ると浜田君が立っていて、「あ、じゃ、邪魔したかな…ははっ」て乾いた笑いをあたしに。いや、うん。浜田君は悪くないけど…!でも、今はタイミングというのを考えてほしかった…。浜田君は「わりい、今さっきのノート見してほしかった」と後ろ髪を掻いた。いいけど、いいけど…!机の上においておいたノートを浜田君に渡した瞬間、田島が動いた。えっ、嘘…!こんなタイミングで…!浜田君は本当に申し訳なさそうに「ごめんな」と呟きながらノートを自分の机に置いた。いいよ、浜田君は悪くない…!ぎゅっとスカートの裾を握り締める。大丈夫、次が、次があるから…!「うわっ!」と後ろから男子の悲鳴が聞こえて振り返ると、タカ君と三橋君と、あれ、千代ちゃんもいるや。どうしたんだろう?と思ってみたら、「三橋〜!いいところなのに…」と三橋君を怒っていた。…は?

「あの、タカ君」
「…すまん、八重。邪魔して」
「え?いや邪魔とか…」

…は?邪魔?いやいや、どういうことよ。タカ君もしかして勘違いしているんじゃ…!サーッと顔が青くなった気がして、慌ててタカ君の肩を握り締める。

「な、何だよ…」
「違うから!違うから!ていうかそのこと田島に言った!?」
「は?いや、言ってねえけど…」

まずい、あらぬ誤解を…!ばっと三橋君とちよちゃんを見る。もしかしてこの二人も…!

「…おっお、おお、俺は…泉君のこ、とが、好き、なのかなって…」
「わたしは阿部君が…」

くらくらとして、倒れそうになった。
いやいや、どう勘違いしたらそうなるのよ。あたしが泉のこと好き?あたしがタカ君のこと好き?おまけに浜田君って…ちょっとちょっと。どんだけ食い違ってんの。面白すぎ…いや面白くない!

「違うから!違うから本当に!」
「本当かよ」
「ほんと!だってあたしが好きなのは…田島だもん!」

ハッ、とした時にはもう遅くて。目の前には田島がいて。心拍数はあがるし顔は熱くなってくるし。ぱくぱくと金魚のように口を動かし、田島を見るけど、恥ずかしくなって目をそらして、そのまま走りだした。
う、嘘。嘘嘘。
田島がいるなんて…思いもしなかった。
いや、だって、今さっき出て行ったばっかり…!
ああ、くそ、田島に聞かれてしまった…!どうしたらいいの?とにかく遠いところまでいって…!

「原田!」

ぱしっと腕をつかまれ、ぐらりとこけそうになる。くるりと振り向けば、田島がそこにいて。じわ、と涙が出てきそうになった。

「今さっきの、さ…」
「……わ、わすれて」

好きだなんていうつもりなかったのに。
田島がまさか出てくるなんて思わなかったのに。
こうやって逃げてるのに、田島は追いかけてきてくれる…。

「忘れれるかよ。あんな大声で言われたら…」
「…」

田島は遠くを見つめながら、あたしにそういう。そう言いながらも腕を掴む手を離さないから、本当困る。

「俺も好きだって言ったじゃん」
「…だって、田島のことだから友達として、かと…」
「ちげーし。そこは分かれよ」

こつ、と軽くでこぴんされた。
じわ、じわと涙がこぼれそうになる。
本当に信じられない、田島とあたしが、両思いなんて…!
ゆっくりと田島の目を見つめると、田島はあたしの視線に近づいて、にっこりと笑った。あ、田島がわらっ…え!?

「た、た、田島っお、下ろして!」
「うおっしゃああ!原田ゲット〜!」
「はあああ!?ちょ、まっ…いやああああ!」

あたしの叫び声はすごく響き渡った。田島がいきなりあたしをお、お、お姫様抱っこして走りだすから…!怖くて田島の首に手を巻きつけた。早く、早くおろせ!いやいまおろさなくてもいいけど!ひとしきり走って、教室の前までたどり着いた。こんな公衆の面前で、あたしは顔が真っ赤だろう。

「たじっま、早くおろせっ…」
「おー面白かった。はい」
「はあ、はあ、地獄だった…」
「俺は楽しかったけどねー」
「田島はでしょ!?」
「うん。だって、原田が俺に甘えてきた」
「あっあまえてきたぁ!?何ポジティブに考えてんのかしらないけど、あれは怖くて…」
「でも、俺のことずっとギュッてしてただろ?俺、原田好きだ!結婚しよう!」
「はあ!?付き合うとかすっ飛ばして結婚!?」
「じゃー付き合う?」
「は?…え、と…うん」
「決まりー!今日から俺たち付き合うことになりました!いえーい!」
「ちょ、注目されてるし!やめなさい!」

そこにいるみんなにピースをし始める田島。あたしは顔を真っ赤にしながらそれを止める。教室の中にはいつものメンバーがニヤニヤしていて、泉はやれやれといった様子だった。
も、もう!
あたしはゆっくりと田島の手と自分の手を絡めた。大好き、田島!

20150928

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