「田島が、田島が最近冷たい…」
「お前がなんかしたんじゃねーの」
欠伸をしながら適当に答える泉にギンッと睨みをきかせた。全く、あたしが田島になんかするわけないじゃん。嫌われたくなくて必死なのに、なんかしたならアタシ今頃死んでるからね。とりあえず田島を見るけど、目があってもそらされる。今だって目が合ったのにすぐそらしてきて、しかもなんか拗ねてるみたい。何かあったのかな、あたしにぶつけてるのかな。そうならいいけど、あたしが何かしてるなら謝りたいな。
「どうにかしてよ泉〜!」
「こればっかりはどうしようも」
「じゃああたしがこのまま嫌われてもいいの〜!?」
「うーん」
泉もさすがに考えたのか唸り始めた。そうだよ、ちゃんと考えてよ。もうあたしどうしたらいいのか分かんない。嫌われたら死ぬ。とりあえず死ぬ。また田島を見たらまた目があって、またそらされた。む〜。あたしは立ち上がって、田島のほうまで歩いていった。
「ちょっと、何よ」
「…」
「あたしなんかした?」
「…」
「何か言いなさいよ」
「…別に、何も」
はあ?!何なの。あたしなんかしたわけ。何だこの態度は。本当に意味が分からない。どうして田島はこんなにあたしに冷たいわけ。しかもコッチ見てくれないし、なんか拗ねてるみたいだし。ねえちょっといい加減にしてよ。あたし田島と喋れなかったら涙が出そうなほど辛いんだから。
「…何か気に障ったようなことしたなら、謝るから…」
あたし、田島に嫌われたくない。
いっつもたわいないこと話してただ笑ってたいだけなんだから。
田島はゆっくりと顔をあげて、アタシを見た。
「ちょっと拗ねてただけ。原田が悪いんだぞ」
「うん」
「原田は阿部のこと好きなの?」
「…え?」
何で、タカ君?
「別に…」
「ほんとに?」
「うん」
「じゃあ、俺と阿部、どっちが好き?」
「へっ」
な、何なの急に。こみ上げてくる熱にあたしはくらくらしそうになった。だって、田島が急にそんなこと言うなんて。まあ田島なら言いそうだけどさ。
でもでも、そんな簡単に田島って言えるわけないじゃん。
「(田島田島田島田島)……た…」
「ん?」
「……」
「おーい」
「……」
「原田?」
「言えるかあ!」
うおっと田島はのけぞって。そりゃそうか。でもさ、そんな質問する田島も悪いんだよ。いえるわけないじゃん、田島って。だってだって、それで気持ち悪いとか思われたら…。いや、思わないかな、田島なら。たったの3文字なんだ。3文字のために頑張ろう、あたし。
「何だよー。やっぱり阿部のこと…」
「たっ田島!」
「うお!なんだ」
「…た、じまのほうが好き」
「…え?」
じわじわとこみ上げてくる熱。田島が見れなくなってくるりと踵を返す。この赤い顔をみて何も思わないわけないよね。ねえ、田島。そんなこと聞くからいけないんだから。あたしすっごい恥ずかしかったんだから、あたしも暫く口聞いてやんない。……やっぱり無理かも。
20150918
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