Bitter Love | ナノ
朝。眠くてあくびがでる。彼女の送り迎えを初めてもう二週間がたった。早いもんだなあ。あ、来た。…え?

「二口くん、おはよう」
「…どしたのそれ」

彼女の口元は赤くなってて、血が固まっていた。俺には絆創膏なんてものは持っていない。彼女も持っていないというから急いでコンビニまで行って買った。彼女は大丈夫だと言ったけど、全然大丈夫そうじゃない。よくみたら、他にも痣がある。朝は眠くてよくみてなかったし、夜は暗くてよく見えなかったから気がつかなかったんだ。ついでにマスクも買ってコンビニに出た。

「はい、どーぞ」
「ごめん、お金」
「いい。早く受け取って」

俺は怒っていた。誰だよ、女の子の顔に傷をつけるなんてよ。それが女でも男でも許せねえ。おろおろとしていたので、立ち止まることにした。もちろん端によって。彼女は上手く貼れないから貼ってくれと言ってきたので、貼ってあげた。貼る時、少しだけドキドキした。かすかに触れた唇は柔らかくて、ごくりと唾を飲み込んだ。

「誰にされたとかさぁ、野暮だし利かないけど、これは酷い。気をつけなよ」
「う、ん…ありがとう」

そういってひょこひょこと俺の隣を歩く。今日はいつもより歩くのおせえなあ。ふと足を見ると、右足だけあまりあしがあがっていなかった。

「…ねえ、足も?」
「…ちょっと転んでくじいちゃった」

申し訳なさそうに彼女は俯いた。いやいや、全然大丈夫だけどさ、一体どんな喧嘩が繰り広げられてんのさ。
…ん?昨日はなんともなかったから帰ってから起こったのか…てことは、家?家族の問題?…でも、あんまり深く関わってもろくなことないよな。
とりあえず歩幅合わせよ。…ちっこいな。

「二口君、あの」
「ん?」
「いつも送り迎えしてくれてありがとう。の、お礼」

彼女は高校生に人気の緑色のショルダーバッグからビニールのようなものを出した。何かな、と思ったら、その中にはクッキーが入っていた。

「私お菓子作り得意なんだ。味も保証します。もらって」
「あ、はい…」

なんか、女子って感じだなあ。可愛くて、お菓子作りも得意とか、これすっげえモテるんじゃねえの。俺すっげえ得した気分なんだけど。俺はエナメルバッグに入れてにこーと笑った。女の子からの贈り物とか久々すぎて、嬉しいな。

「それでさ」
「ん?」
「今日で送り迎え終わりにしてほしい」
「…は?」

歩き始めた俺たち。また立ち止まることになりそうだ。

「ほら、最近聞かなくなったし、もう大丈夫かなって」
「まだ犯人捕まってないんだろ?危険だと思うけど」
「…でも、これ以上迷惑はかけられない」

少し青ざめて言っている彼女に、何かあったのかと俺は感づいた。

「何かあったの?」

彼女は何も言わなかった。そして、「何もないよ」と無表情で言った。ねえ、何考えてるの?何もないわけないよね。足も引きずっちゃってさ、口元にも傷あるし、もう気になっちゃうじゃん。

「今日もいつものところで待ち合わせだから」
「…だから」
「俺今日は終わるの早いから先に待ってるねー」

ずるい言葉。そんなこと言われたら、彼女も待つしかないだろう。気になるんだ、何があったか。今更他人だなんて言わせないよ。
*




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