Bitter Love | ナノ
「お前彼女できたの?」
「え」

昼休憩。ジュースを買いに言ったら茂庭さんと会って、開口一番そう言ってきた。「できてませんけど」と俺がいうと「え?じゃあ嘘なのかな〜」と首を傾げていた。どういうことかと聞くと、

「俺の友達がさ、お前の後輩の二口って奴、女子と歩いて学校行ってるのみたっていうからさ」
「…それ違いますよ。確かに一緒に行ってますけど」
「何々?幼馴染的な?」
「違いますよ。まあちょっと理由があって一緒に行ってるだけです」
「ふーん?」

茂庭さんはニヤニヤと俺を見ているけど、悪いけど色恋目的で一緒になってるわけじゃない。結構暗い理由があってこうなってるだけで。俺ははあとため息をついた。
あのことがあって次の日、早速一緒に行くことになった。彼女の顔は青ざめていて、少し遠回りになるけどあの公園を通らないようにした。思い出させないように、俺は配慮したつもりだが、彼女は気づいていなかった。

「…お疲れ様」
「お疲れ」

帰りは、なるべくお互いの学校から近いところで、もちろん彼女の学校に近いほうを指定した。人通りがあるところで、割りに明るいから大丈夫だろうということで、商店街近くを指定した。そして相変わらずのことだが、話題もない。自分で買って出たことだが、こればっかりは仕方ない。

「…ねぇ、二口くん」
「ん?」
「二口君て、大きいね」
「ん?おお、まあバレーしてるしね」
「バレー、してるんだ。私の友達もバレー部で、たまに見に行ったりしてる」
「へー。面白い?」
「うん。皆一生懸命で、凄いなって思う」

へえ、割りに見るんだ。意外だ。俺はその言葉を飲み込んで、「バレーできる?」と話を続けた。

「私運動できないんだけどね、バレーは少しだけできるんだ。教えてもらって。球技大会のときにね」
「へ〜。いいじゃん」
「うん」

彼女は嬉しそうに笑った。俺も釣られて笑う。そりゃあ、こんな笑顔見せられたら男もたまらんだろうな。可愛いし、いい子だし、モテんだろうな。まあこの子があんまり知られてないのは、女子高で、少しだけ内気だから、ってことかな。
公園の場所を通らず、また少し通り道だが違う道を通ろうとしたら、「待って」と引き止められた。

「いいよ、公園通っても」
「え?」
「わざわざ通らないようにしてるんでしょ?二口君いるから、大丈夫」
「いやでももし襲われたりして俺も役に立たなかったらいけないし」
「大丈夫だよ」

俺の袖を少しだけ引っ張るしぐさでさえも可愛いから、「仕方ないな」と言って方向をかえた。こんな可愛い子、共学だったら告られまくりなのかな、そう考えたら俺ってラッキーじゃね?とさえも思えてきた。

「佐々木さんて、中学の時共学だった?」
「佐々木でいいよ。うん、そうだよ」
「何で女子高に行ったの?」
「…なんとなく、かな」

一瞬間があったのはおいといて、こんな可愛い子、いじめられてるんじゃないかと心配になってきた。女子って可愛い子は虐めるとかあるもんな。逆もあるけど。

「学校では、どんな感じ?」
「私が?」
「うん」
「こんな感じ。変わんないよ」
「へえ」
「でも、たまに何考えてるかわかんないって、言われる」

無表情で淡々と言った彼女の横顔は、美しかった。俺はふむ、と考え込んだ。確かに、何考えてんのかわかんないんだ。でも、俺はまだ知り合ったばかりだからかもしれない。

「じゃあ俺が今何考えてんのか当ててみる」
「え?」
「……寒いなあ」
「あ、今それ思った」
「うそまじ!?」

俺は笑いながらそういうと、「まじ」と真顔で言ってくるからまた笑った。俺はしていたマフラーを佐々木に差し出した。「使いなよ」俺は笑いながら言うと、佐々木は吃驚したのかぽかんと口を開け、暫くして「ありがとう」と受け取った。

「…暖かい」
「そりゃ今まで俺が使ってたからね」
「…そ、か」

ギュッとマフラーを握る。そんなに俺のマフラーが気に入ったのかな?母さんの手作りなんだけど、と思いながらクスりと笑った。

「…家に帰りたくない」
「ん?何か言った?」

佐々木の言葉と風が一緒に来て、声が聞き取れなかった。もう一回聞いてみたら、「なんでもない」というので、俺は気にしないことにした。風に吹かれて、彼女の首筋に傷が見えたのは秘密だ。

20150820



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