Bitter Love | ナノ
あれから一緒に行くことは会っても一緒に帰ることはすくなくなった。やっぱり遅い時間まで待ってもらうのは申し訳ないからだ。最後まで何部か明かさなかったけど、あいつ何部なのかな。朝練あるってことはやっぱり運動部なのか…?ううん、分からない。まあ、いいや。いつか聞こう。今日も練習が終わって更衣室で携帯を開くと、LINEが来ていた。あ、佐々木からだ。あのLINEを送ってから一度も返事が来なかったのに、なんか今更見るのは恥ずかしい。用件は、「渡すものがあるからいつもの待ち合わせ場所で待ってる」とのことだった。俺はニヤける口元を隠しながら、動作を早めに着替え始めた。「どしたんすか?」と後輩が聞いてきたけどもう無視だ。早く行かないと、寒いだろうし。このLINEをどこで送ったか知らないけど、もう10分も立ってる。彼女の家からの待ち合わせ場所は10分ちょっとで着くし、俺が今から急いでいったらちょっと待ってもらうけど早めに会える。早く、早くしねーと!

「お疲れさんでーす!」

後輩からのねぎらいを返しながら俺は走った。走って、待ち合わせ場所についた、が、まだ佐々木は来ていない。携帯をとりだし、彼女のLINEをタップした。「ついたよ」とLINEを送るが、返信はこない。どうしたんだろう、と思いながらポケットに手をつっこむ。数分まったが来ない。何かあったんじゃ…と通話ボタンを押した。ずーっとコールが続き、不在着信に変わる。何回もして、やっぱり何かあったんじゃ、と俺は嫌な想像ばかりした。1コール、2コール、3コール…

「二口くっ…」
「あっもしもし佐々木!?どうした、何かあった!?」
「たっ…助けて!」

ガシャッと音を立てて、車が通る音が聞こえた。「いい加減にしろよっ!」と男の声が聞こえる。俺は通話をきらずに走り出した。きっと、あの公園だ。はやくはしんねーと。もっと早く、早くしねーと!!十字路を抜けて右に。そして真っ直ぐ走り、公園が見えてくる。人はいるけど気づいてないってことはどこかに隠れてる!?声もきこえねーから口でも塞がれているのか。ゾッとしながら携帯を握り締め、公園に足を踏み入れた。このまえは茂みの近くだったから、近くに…。いない。もしかして公園じゃない?踵を返そうとしたらかすかに聞こえた「二口くん」という声に耳を澄ました。こっち側、か…?滑り台の近くの木が生えてる、ところ…いた!!

「何やってんだよ!」

男はビクッと肩を震わせた。佐々木の顔は死んだような目で、服の中に手を突っ込まれていた。俺は通話を切って、震える手で110番に電話をかけようとした瞬間、男は逃げようとしていたので俺は携帯片手に男の腕を掴んだ。この手は絶対離さない。佐々木の体の中に、こんな汚い手入れやがって。バッと顔を見ると、一度佐々木を追いかけたときにぶつかった男だった。いやいやそれより早く警察だ。だけど男が暴れて中々携帯がかけられない。もう片方の手で俺の手を離そうとぐいぐいと掴んでいる。やべえ、離れそうになった瞬間――

「おまわりさんこっちです!」

30代ぐらいの女が警察を連れてやってきた。ああ、もう大丈夫だ。それから男は観念したのか暴れようとしなかった。警察に手錠をかけられたのを見て、佐々木に駆け寄った。幸い、今回は服を脱がされていなかったらしく、前のような酷い格好ではなかった。佐々木の上半身を起こし、ゆさゆさと肩を揺さぶる。彼女は俺が分かったのか、涙を流した。俺の袖を両手で掴み、俯きながら、嗚咽した。俺は佐々木を抱きしめ、「もう大丈夫だ」と耳元で囁いた。

「あの、ね…あの男、の人がお父さんに見えて、怖くて…声が出なくて」
「うん」
「でも二口が見えたから、頑張って声出したの…」

そう言ってしゃくりあげる彼女をいっそう強く抱きしめた。

「…二、口君は、凄い、ね…」
「何が?」
「私をいつも、助けてくれる…」

俺はいっそう強く抱きしめた。佐々木にはいう事はたくさんあるが、一つだけ。

「俺、佐々木が好きだ」

今度は、嘘じゃないから。

20150825




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