Bitter Love | ナノ
何も返事が来ず、早1週間。はあーとため息をつきながら今日も部活が終わって帰る。…そうだ、まだ彼女は学校にいるかな。思い切って彼女の学校まで行ってみた。校門まで行って、彼女が出てこないかとキョロキョロと見渡すが、出てくる気配がない。何で俺がここまでしてんのかわかんない。もうヤケになっているのかもしれない。

「あ、あの!佐々木菜月って人知ってますか!?」
「えっ、はい…同じクラスですけど」
「あっあの、部活ってまだ終わってないんですか?」
「もう1時間も前に終わってますよ」

もういい?と聞かれ、俺ははいと言って離れた。そして踵を返して歩き出す。そうか、1時間も前に終わってたのか。なあ、君は嘘をついていたんだな。俺に、優しい嘘を。断れなかったのかな。君は優しい。俺は胸の中がじんわりと熱くなる気がした。
だって、いい子すぎる。ふとクッキーのことを思い出した。甘さ控えめのビターな感じで、クッキーのつつみの中には紙切れが入ってて、「いつもありがとう」って可愛い字で、最後にニコちゃんマークまで書いてさ。きっと何かあったんじゃないのかと思う。だって、前からやめてほしいと思ってたんならあんな紙切れを入れない。ポケットからその紙切れを出して、ぐしゃぐしゃにならないように軽く握った。なあ、君は今どうしているんだろうね。

「学校まで来る…とか、俺ストーカーかよ」

もう来れで終わりなんだろうか。LINEもメッセージが返ってこないし、見てもない。まあ、未読でも見れる長さの文だし。まあ、ブロックしてんのかな。俺すっげえ女々しいな。諦めきれないのは、彼女の人柄のよさと、あの怪我だ。本当に勘違いならいいけどさ。急に送り迎えもやめてってさ、なんかあるって思うじゃん。

「はああー」

ため息が大きく響き渡った。なんかもー疲れた。すっげえ疲れた。帰ったら即行ご飯食って風呂入って寝よ。それで、彼女のことは忘れよう。関わらないでって言われたし、関わっちゃいけないんだろうし。あ、そいやコンビニで買いたいもんあったんだ。コンビニ寄ろ。
コンビニ入って、買いたいもんを持ってレジに並ぼうとしたら、

「…佐々木?」

その声でびくっと反応する子は、ばっと俺を見た。その子はお釣りをもらったら駆け出しだ。俺は慌ててそこに商品を置いて追いかける。こんなところに?しかもなんか傷増えてね?言いたいことはたくさんあるけど、まずは彼女を捕まえなくては。彼女は誰もいない路地を通っていた。
自分を運動音痴と言ったように本当に足が遅く、すぐ追いついて腕を引っ張った。「いたっ」と大きな声で言われたからつい離してしまい、彼女はそれで足がもたつきそこに転んでしまった。
俺は急いで駆けつけると、マキシ丈で少し濃いスカートを履いていたのが赤く染まっていた。ポケットに入れておいた絆創膏を取り出したら、「いいから」と収めようとした。

「よくねーだろ」
「いいの。もう大丈夫だから、関わらないで」
「何が大丈夫なのさ。こけたのみて知らんぷりなんてできねーだろ」
「私…よくコケるから…」
「今のは俺が手離したのが悪いから」

彼女はしぶしぶスカートをたくしあげた。俺は患部に貼ろうとしたら、ところどころ痣があることに気づいた。
そういえば彼女はいつも黒のタイツを履いてきていた。
これを隠すため、だったのか…?俺は彼女の腕を掴んで、痛いと言ったところまで袖をあげた。やっぱり。青痣ができていた。

「…なあ、俺もうこれ見ちゃってさ、関わらないようにするほうが難しいと思うんだけど」

彼女は俯いて、ギュッとスカートを握った。もう言い逃れはできないと諦めたのか、無言を通した。

「頼りないかもだけど、助けたいと思ってるんだよ、俺」

その言葉に嘘はなかった。だって、君はこんなに脆くて、今にも壊れそうじゃないか。彼女はゆっくりと俺をみて涙がほろり、ほろりとこぼれ落ちる。

「…助けて」

俺はいつの間にか、彼女を抱きしめていた。



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