※この話は、マジLOVE2000%のオープニングを見てたぎった思いを文にしたものです。(2013/4/8現在)
彼らのマジLOVE2000%のステージをモチーフにしていますが、矛盾点など御座いましても、軽い感じでスルーしていただけると助かります。

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「いやぁ、やっぱりかっこいいね、ST☆RISH! ずっとテレビに釘付けだったよ、私!」
「ふふ……そうですか?」
「うんうん! 特に真斗くんの視線とかダンスとか最高だったよ!」
「……なるほど」
「あと翔ちゃんの衣装とパフォーマンス!」
「ほう……」

彼らのステージがテレビ中継でオンエアされた翌日、私は一ノ瀬トキヤの部屋に押し掛け、その感想を思ったまま口にしていた。
一晩経っても興奮冷めやらぬ私の熱弁に、トキヤが少し嬉しそうに口の端を上げる。先ほど彼も、昨日のステージは満足のいくものだったと自負していた事から、おそらく私の熱弁に共感してくれているようだった。

セシルくんが加入したST☆RISHのステージは、一目見ただけで彼らの世界へ惹き込まれ、私は曲が終わるまでテレビから目を離すことができなかった。言葉では言い表せぬ程魅力的なステージに、私はただただ呆気に取られるばかりだった。


「それに音也くんとなっちゃんの笑顔も可愛かったなぁ。ファンのみんなも音也くんとなっちゃんが手を振るだけで黄色い声上がってたもんね!」
「ま、まぁ、そう……ですね」
「レンくんのセクシーなダンスもやばかったなー! レンくんってそこに立ってるだけで雰囲気出るもんね!」
「……」

次々と挙げる彼らへの賛辞に、なぜだか次第にトキヤの反応が薄くなっていく。
先ほどまで共有していたはずの気持ちは幻だったのだろうかと思うほど言葉が少ない。

「そ、それにほら、セシルくんの貴公子のような微笑みも素敵だったし、音也くんと翔ちゃんのバク転とか……」
「……」
「かっこよかった、よ、ね……?」
「もも」
「え……?」

気が付くとトキヤの眉間には深い皺が刻まれており、先ほどとは打って変わったように不機嫌な表情をしていた。

「……」

あまりの豹変ぶりに驚き言葉を詰まらせる私にトキヤが詰め寄る。彼の綺麗な顔が目前に迫り、瞬きをするのも忘れてしまいそうになった。

「トキヤ……どうしたの?」
「どうしたのも何もありません。あなたはなぜ恋人でもある私を差し置いて、他のメンバーばかりを褒めそやすのです?」
「……え?」
「焦らしプレイですか? 私はそんな悪い子は嫌いですよ?」
「うっ……」

目の前のトキヤの顔が僅かに歪み、照れているのか耳が仄かに赤くなっていた。




「あ……そっか。トキヤ、私に褒めて欲しかったんだ……?」

数秒間トキヤと見つめ合った後、私はようやく彼が嫉妬しているのだということに気付き、単刀直入にそう問うた。

「そっかそっか。トキヤも可愛いところがあるんだね」
「なっ……、ち、違いますっ!」

しかしトキヤはそれを認めず、反射的にそう怒鳴った後、赤くなっていく顔を隠すように私から背ける。どうやら私は彼の核心を突いてしまったようで、なんとなくお互いの間に流れる気まずい空気を感じた。



しばらくすると意地を張る事を諦めたトキヤが、顔を背けたまま口を開く。

「そ、それで、どうでしたか? その、私は……」

それを口にした彼には、最早いつものクールな面差しは無く、逆に妙に焦っているようで、ほんの少し可愛いように感じた。

そんな彼を見た私の悪戯心に火が点いてしまったのは、完全に不可抗力だと思う。


「ああ、うん。トキヤと真斗くんが並んで踊るところだけど」
「え、ええ。どうでした!?」

ようやく口にしたトキヤへ対するその言葉に、彼は過度に期待しているようだった。
おかげで、ほんの少し次の言葉を発する事に躊躇してしまう。


「え、ええと、ふ、二人一緒に腰を振る時、なんだか妙にトキヤだけが変態っぽかったよね!」
「……」
「ねー……?」
「……」
「……ト、トキヤ?」


「ふはははは」


一瞬間を置き、トキヤが不気味に笑い出す。今までに聞いた事のない彼の大きな笑い声に、私は冗談だと言う機会を完全に逸していた。おそらくやり過ぎたのだと思うが、謝罪のタイミングが全く掴めない。


「もも」
「え? ひえっぶ!?」

いつの間にかトキヤが私の頬を片手で掴み、思い切りその手に力を入れて真横へ引っ張っていた。

「い、いひゃい、ホヒヤ、いひゃい!」

トキヤは手の力を緩める事なく私の頬を引っ張り続け、そしてとても綺麗な笑顔をこちらへ向けた。

「そうですか。お褒めにあずかり光栄ですよ、もも」

トキヤが笑顔で怒っている。私は必死に冗談だったということをアピールすべく、頬の痛みを我慢して笑顔を作った。

「どうしました? 頬をつねられて、そんなに嬉しいのですか? とんだド変態ですね、ももは」
「ひ、ひがっ……」
「え? 何ですか? このまま犯して欲しい? なるほど、さすがもも、変態の恋人のド変態だけありますね」
「ひーーー!」

私は身の危険を感じ、最終手段を用いった。
私の頬を掴む彼の手を思い切りつねり、力任せにトキヤの腕を振り払う。トキヤは小さく痛いと漏らし、ようやく私の頬から手を離した。



「そもそも悪いのはももなのですよ? 私の事を執拗に焦らすから、こうなるのです」
「う……分かってるってば。ごめん」

トキヤが先ほどと同じく私の隣に座り、腕を組む。それからほんのり勝ち誇ったような表情を浮かべてこちらを見下ろすと、私の腰をやや強引に引き寄せた。

「で、本当のところはどうだったのです? 私の歌声とダンスは」

耳元に唇を寄せ、わざと吐息を吹き掛けるように掠れた声を出す。私はこの彼の声に果てしなく弱い。

「うん……、よ、良かったよ」
「良かった、だけでは分かりません」
「えぇー……」
「ほら、言ってしまいなさい」
「え? な、何をよ……」
「正直に、私の腰使いに、興奮したと」
「んっ……」

自信ありげにそう言うと、トキヤは私の耳に噛みついた。彼の声と吐息に麻痺寸前だった私の感覚は、その行為により完全に麻痺してしまったようだった。



「……でも、実は私も踊っている時、ももに見られている事に興奮し、危うく勃ちそうになってしまったので、お互い様、なのですが」
「へ? 勃っ……?」
「私の声とセクシーなダンスで、部屋で一人、ももが興奮してくれているのかと思うと、私は気持ちが高揚し、本当に危なかったのです、勃ちそうで」

トキヤが呆然とする私をソファへ押し倒し、足の間に体を滑り込ませる。彼のサラサラの髪の毛が揺れ、私の頬をくすぐった。

「ん……、な、なに考えてステージ立ってんのよ、この変態!」
「そんなの、決まっているじゃないですか」

私の首筋に鋭い痛みを残し、トキヤが顔を上げる。

「私はいつでも、ももの事を考えています」
「……」

その殺し文句は反則だ。
私は彼を責める言葉すら忘れ、それ以上何も言い返す事ができなかった。

「今日も私の腰使いで、ももを天国へイかせてあげますよ」

とんでもなくイヤラシイ事を堂々と言ってのけた彼のその笑顔がなぜだかとても眩しくて、私は顔に集中する熱を隠すように顔を背けた。

トキヤはいつでも私の事を考えていると言っているが、私だって四六時中トキヤの事を考えていたりするのだという事実は、なんとなく黙っていた方が良いのかもしれないと思った。






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