私は16歳になると奴良家に嫁いだ。
代紋をリクオ君に譲ったので、のんびりすると宣言した鯉伴さんだったが、それでも鯉伴さんでないと解決できない事もあり、今日もどこかに外出していた。
夏の半ばなので今日もとても蒸し暑い。
洗濯と掃除を終わらせ、縁側に座り涼しい風に当りながら一休みしていると、小妖怪さん達が何かを持って駆け寄って来た。

「響華さま〜っ、見て下さいよ、これ、これ!」
「?」

首を傾げつつ、渡された紙を読んでみるとそこには「納涼・花火大会」という文字と花火の写真がプリントアウトされていた。

「これに2代目誘って行けばいーじゃないっすかー!」
「そうそう。たまには2代目とでぇとしねーと、響華様、働きづめで倒れちまうぜ!」

その言葉に周りの小妖怪さん達はコクコクと頷く。

えーっと…そんなに働きづめじゃないんだけど……

私は苦笑しつつ日付を見る。
するとそれは今日だった。

「今日、花火大会って書いてあるけど…」
うん。鯉伴さん忙しそうだから無理だと思います。

そう言うと小妖怪さんの一人がぽんっと手を打った。

「じゃあ、リクオ様と行けばいーじゃないっすか!」
「お、それ、ナイスあいであだ!」
「響華様。リクオ様ならぱとろーるのついでに花火大会連れてってくれますよ!」

うーん……綺麗な花火見てみたいけど、リクオ君のパトロールの時間を割いてまで連れてって貰うのも悪い気がする。

「ううん。別にかま…「良し! そうと決まりゃあリクオ様に頼みに行こうぜ!みんな!」
「「「「「おう!」」」」
「まっ……」
いや、待って、待って下さい!

慌てて止めようとするが、小妖怪さん達の行動は速かった。
あっと言う間にその場からいなくなる。

ううっ、リクオ君に迷惑かけちゃう……。どうしよう……

私はその場で眉を八の字にして困惑した。
だが、それも杞憂に終わった。

夕闇の中、カランと下駄の音を鳴らしながら、鯉伴さんとアスファルトの道を並んで歩いてます。
嬉しい事に、今日の仕事はリクオ君一人で出来るものだったらしく、鯉伴さんが花火大会に付き合ってくれることとなった。
黙って歩いていても、鯉伴さんの傍に居られたらすごく嬉しいので、何もいらない。
でも、欲を言えば、手を繋いで欲しいんだけど、それは本当に恥ずかしいほど強欲な望みだと思う。
そう思いつつ俯いて歩いているとふいに手を握られた。
目を丸くし鯉伴さんを見るとフッと優しい笑みを返される。

「行くぜ?」
「はい」

何も言わなくても欲しいモノをいつの間にか与えてくれる鯉伴さんの優しさに心が暖かくなる。
大好きです。鯉伴さん。

そして、私と鯉伴さんは寄り添いながら、夜空に花開く大輪の花火を見た。

来年も一緒に見たいな、と思うのは、贅沢かな?
鯉伴さん。







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