夕暮れ時になると涼しい風が部屋の中に吹いてくる。
16歳になった夏、人妻となった私は旦那様の頭を膝枕しながら、部屋の中で寛いでいた。


涼しい風に目を細めながら、ふと思う。
鯉伴さんって、400年くらい気の遠くなる時間を生き続けて来た中、女性と心安らげる時間を持てた時間って少ないんじゃないかなって。

私は自分の膝の上で眠っている鯉伴さんの頭を撫ぜた。
鯉伴さんはすーすーと寝息を立てている。
なんだか心を許してくれてるようで、嬉しくなる。

鯉伴さんの髪をゆっくり撫ぜながら改めて思う。

月華さんよりも乙女さんよりも、そして鯉伴さんに暖かい笑顔で元気をもたらしてくれた若菜さんよりもずっと長く傍にいようと。
そしてずっと安らげる場所でいたいな、と。

「鯉伴さん。ずっと、傍にいるね……」

小さな声で囁くと鯉伴さんの寝顔が幸せそうに笑った気がした。

大好き、です。







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