昨年の冬、13歳の誕生日を迎えた#朝倉#響華です。

今は2年生に進級する前の春休み中です。
春なのだけど、おやつの抹茶アイスを頬張ってます。
おいしいです! 抹茶アイス大好き! やめられません!
ちなみにこれは、お母さんが作ってくれた手作りアイスだったりします。


ちゃぶ台の傍でもふもふと幸せに浸りながらアイスを食べていると、後ろから男の人の手が伸びて来て器から指でアイスをひと掬いされた。
吃驚して後ろを振り向くとそこには鯉伴さんが居た。

「鯉伴さん!? どうしたの?」
「うまそうなもん食べてるじゃねぇか。響華ちゃんが作ったのかい?」

にっと笑った鯉伴さんは指についたアイスを舌先でペロリと舐める。
「うめぇ」と呟く鯉伴さんに私は首を横に振って答えた。

「ううん。お母さん! 私、まだまだ上手に作れないです」
「そうかい? でもこの前、料理の教本読んでたじゃねぇか」

不思議そうな顔をしながら、私を自分の膝の上に乗せた。
もう小さくないから重いと思うのだけど、多分鯉伴さんの中では、まだまだ私は幼稚園児なのだろう。
だんだん恥ずかしくなり、抵抗していたのだが、全く止める気配が無いので、私それに慣れてしまい、素直に膝の上に座りながら、アイスの器をちゃぶ台から自分の手に持った。
そして鯉伴さんの方を振り向き、その問いに答える。

「えっと……、作れることは作れるけど……。混ぜ方とかちょっと上手にできないです…」
「失敗は成功の母っつうじゃねぇか……。響華ちゃんの手作り菓子、食ってみてぇな」
「うーん? あまりおいしくないと思うけど…」
 
鯉伴さんを見ながら首を傾げると頭をくしゃくしゃと撫ぜられた。

「天華でさえこんなに旨く出来るんだ。響華ちゃんならもっと旨く出来るぜ?」

いやいや、鯉伴さん。お母さん見かけによらず何でも出来ます!
そんなお母さんと比べないで下さいーっ

心の中で反論していると鯉伴さんは何を思ったのか、私の顎をくいっと持ち上げた。

「鯉伴さん?」

どうしたのかな? と首を傾げながら鯉伴さんを見ると、親指で下唇をなぞられた。

「こっちはオレが料理しねぇとな……」
「こっち?」

って、何の事? と思う間も無く、不敵に微笑んだ鯉伴さんにそのまま唇をペロッと舐められた。

り、鯉伴さんっ!?!?

吃驚しているとおもむろに唇を重ねられる。
自分から離れようにもいつの間にか後ろ頭を手で固定され、離れられない。

「ん、んーっ……あ、や……、ん」

重ねられた唇から舌が挿入され、ちゅく、と水音を立てながらそれが絡められる。
舌から甘い痺れが広がり、それは徐々に体中へと浸透して行った。
そして、銀の糸を引きながら唇を離されると体中の力が抜け鯉伴さんの腕に支えられているだけの状態になってしまった。
鯉伴さんは体の力が抜けた私の耳や首筋に舌を這わせる。
そこからまたゾクゾクとした感触が体を駆け抜け、無意識に鯉伴さんの着物を握った。

と、突然ゴンッと大きな音がしたかと思うとその感触が止んだ。
朦朧とした意識の中、薄らと目を開けると鯉伴さんが後ろ頭を片手で押さえながら、「イテテ・・・」と呻いている。

え? え? え? 鯉伴さん、どうしたの!?

吃驚して鯉伴さんを見ると視界の端に直径1メートルほどもある、昔の洗濯桶みたいなものが転がっていた。

あれ? このパターンは……
なんだか何度も覚えがあるなぁ、とぽやっと考えていると居間の入り口の扉がガラッと開けられた。

「響華ちゃん、無事!?」
「あれ? リクオ君? それにつららちゃん……にお母さん?」
「かっははは。帰りにこの2人に会ってね。鯉坊を探してるって言うから、連れて来たんだよ」

カラカラと笑うお母さんに私は首を傾げた。

あれ? なんで鯉伴さんがここに居るって判ったんだろう?
もしかして、鯉伴さんの行き先候補に私の居る場所が1番に上がってる?

そう思うと何故か嬉しさと照れくささが入り混じったような気持ちになった。

「父さん! いい加減響華ちゃんから離れてよ! 今日は総会でしょ! いつまでほっつき歩いてんの!」 
「オレの嫁にくっついてんのがいけねぇのかい?」

悪戯っぽく笑いながら、私をそのまま抱き締めると、今度は鯉伴さんの頭の上に鍋をかきまぜるお玉がコココンと連続して数本落ちて来た。

「懲りないガキだねぇ。響華はあんたには嫁にやらないって何度言ったら判るんだい? そのもの覚えの悪い頭、再教育してやった方がいいかい?」
「テテテ……、そりゃちっと遠慮しとくぜ」

鯉伴さんはお玉が落ちて来た場所を手でさすりながらも、もう片方の腕は私を抱き締めて離さなかった。
それを見た、お母さんは微笑しながらこちらへ来ると、ベリッと剥がすように私を鯉伴さんから離し小脇に抱えた。
そして、鯉伴さんをリクオ君とつららちゃんに渡す。

「鯉坊。あんたがふらふらするの止めたら、考えてやるよ。無理だろうけどねぇ。かっははは」
「そりゃ……「ボクもお願いします!」
「?」

リクオ君が鯉伴さんの言葉を遮り、真面目な表情でお母さんに口を開く。
つららちゃんは、鯉伴さんのもう片方の腕を持ちながら、「わ、わ、若ーっ!?」と目を丸くした。
その中、お母さんは面白そうにリクオ君を見ながら頷く。

「あんたは真面目そうだけど、奴良組付きってのがいただけないね。組と縁切るなら考えてやるよ」
「おいおい、そりゃオレが困るぜ……。計画が狂っちまうや」
「……本当に組を継がなかったら、響華ちゃんをボクに一生守らせてくれますか?」
「若―――っっっ! それだけはダメですっ! どうか思いとどまって下さいっ」

4人の混沌とした口論は延々と続く。途中夕方になり、リクオ君が夜のリクオ君に変身した所為で、口論が更に白熱化した。
と、言うか私の話題なのに、私自身蚊帳の外だった。

「うーん? 洗い物片付けようかな?」

鯉伴さんから突然キスをされ力が抜けた時、落としてしまったアイスを見ながら呟く。
そして立ち上がるとせっせと片付けをした。

でも、何も無いのになんでキスなんてしたんだろう?
それに料理って言ってたけど、なにを料理したかったんだろう?
はて?

私は片付けながら、心の中で首を傾げる。
そして、また今度改めてこの事を聞いてみようと心に決めた。

でも、抹茶アイス、少ししか食べ切れなかったよ……
ううっ、これが最後だったのに……
……お母さん、また作ってくれるかな?

そう思いつつも、自分でも今度チャレンジしてみて上手く行ったら、鯉伴さんに食べて貰いたいな、と少し先の未来を思い描いた。


「若っ! この私がお傍についてる限り、絶対に許しません!」
「お前ぇには関係ねぇ……」
「関係ありますっ!」
「おー、おー、リクオ、将来の嫁に尻敷かれてるぜ…。微笑ましいねぇ」
「鯉坊。冗談で話し逸らすなんていい度胸だよ。アンタの昔話しでも響華に話し聞かせてやろうか? 特に間抜けな話しを中心にね」

4人の口論(?)は、朝方まで続いた。







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