秋になると陽が暮れる時間も短くなる。
夕日に染まる奴良家の庭を見ながら、鯉伴さんは私を膝の上に乗せると私を愛おしそうに見つめた。

「響華。……オレの嫁になって幸せかい?」
「はい。とっても幸せです。みんなも良くしてくれるし……」
「そうかい……。そりゃ良かった。天華から掻っ攫った甲斐があったもんだぜ」

あ、ははは。

私はその言葉に、結婚が決まった時の騒動を思い出し、思わず苦笑した。
お母さんが鯉伴さんをある場所に連れて行って、鯉伴さんを試したのだ。
その事を詳しく思い出すと、思わず遠い目をしてしまう。
と、ふいに鯉伴さんが私の唇に舌を這わせた。

「何考えてんだい……?」
「うえ? えっと、以前の事?」
「目の前の旦那を放っとくなんざ、いけねぇ奥さんだな…」

『旦那』という単語に何故か心が暖かくなると同時に、恥ずかしくなった。

「おいおい。まだ、実感が沸かねぇのかい?」
「……かも」

赤くなった顔を見せたくなくて、俯くと、顎に手を添えられクイッと顔を上げられた。

「それじゃあ、もっと実感して貰わねぇとな……」

え?と思う間もなく、そのまま口を薄い唇で塞がれた。

「ん……んっ」

そしてぬるりとした肉厚の舌が、咥内に入って来る。
それは、私の舌を優しく撫ぜる。
歯茎の裏、そして舌の裏までねっとりじっくりと。
触れられる度、甘い痺れが身体を駆け抜け身体が小さく震える。

「ん……ふぁ、ふ……」

そして、いつの間にか身体を強く抱きしめられ、舌がクチュリと音を立てて絡む。
それがすごく気持ち良くて、私は目を閉じたまま、鯉伴さんの首筋に手を回しギュッと抱きついた。
深い口付けは何十分くらい続いただろう。
やっと、唇が離れると、身体に力が入らずクタッと鯉伴さんの肩に頭を凭れる。
鯉伴さんは私の頭を優しく撫ぜると、顔を覗き込んだ。

「腹減っちまったな……。響華。馳走してくれるかい?」
「ん……、あっ、ごめんなさい。すぐ支度をするね!」

慌てて鯉伴さんから離れようとしたが、腰をガッチリ掴まれてて動けない。

「鯉伴、さん?」

首を傾げる私を、鯉伴さんは艶やかな表情で見ると私の唇をまたペロリと舐めた。

「馳走はオレの前にあるや」

え? どこ?

周りを見回していると、トサリと身体が押し倒された。
そして着物の前を開かれると、首筋から鎖骨に向かって舌を這わされた。
ゾクゾクっとしたものが、身体に広がる。

「やっ、鯉伴さ……っ」

そして、胸の紅いものをペロリと舐められた。

「旨そうだぜ……」
「まって、それ、食べ物じゃな、……っ」

言い終わらないうちにそれを口に含まれ、その甘く鋭い痺れに思わず背中が浮き上がった。


その後、熱く溶かされてしまった私は、疲労感で起き上がれず、夕飯が食べれなかった。

ううっ……お腹すきました……

それをポツリと呟くと、鯉伴さんは私の耳に囁いた。

「今度はオレを喰うかい?」







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