えーっと? 一体どうなってるんでしょうか?

私は誰かの腕に抱かれていた。
首を動かし周りを見回そうとすると頭の上から、聞き覚えのある低い声が降って来る。

「おっ 起きたかい?」

そして突然見慣れた顔がドアップで目に入ってきた。

「へ? 鯉、伴さん? あ、れ? ここって」

身体に感じる暖かさで現状を把握する。私は鯉伴さんの左腕の中に居た。
身体の上には誰かの着物が掛けられている。

わ、私、いつの間に鯉伴さんの腕の中に!?
確か、さっきまで……?

私は混乱しながら、先ほどまでの自分の記憶を辿った。


あと3日で誕生日を迎える私なのだが、今年は土曜日がクリスマスイブだった。
土曜日という事でリクオ君に家へ遊びに誘われた。
土曜日と日曜日はお母さんが仕事で居なくなる日なので、遊びに行っても怒られない。
私は、そのお誘いを断る理由も無い為、素直に頷いた。

そして、お昼からリクオ君の家に出かける。
イブなので、プレゼントも持った。
奴良家に着くとリクオ君が門の前で出向えてくれたのだが、玄関先で小さな妖怪さん達に捕まった。
そして、広間に通され普通の大きさの妖怪さん達がお酒を飲みどんちゃかと騒ぐ中、小さな妖怪さん達とリクオ君を含め隅っこで遊んだのだ。

でも、昼間から宴会してるなんて、何かお祝いごとでもあったのかな?

そう思っていると納豆小僧さんが、げーむに負けたら勝った者の言う事を聞く事、と言いだし、私は見事に負け勝利に輝いた納豆小僧さんの言う事を聞くこととなった。
ちなみにリクオ君は、そのルールが適応される前に首無さんに呼ばれて席をはずしてしまった。
そして、確か、納豆小僧さんが「おいらの酒を飲めぇー」と言い、白いお猪口に透明なお酒を注がれ渡されたのだ。
お酒特有の匂いがしたけれど、その中なんだか甘やかな香りがして、私は舌でぺろりと舐めてみた。
その味がなんだか甘くてすっきりしていた為、ぐいっといっきに飲み干してしまった。
お酒って甘いんだなー、と思っているとお猪口に次々とお酒を注がれる。

「いやー、響華様っていける口だったんでやすねー。流石二代目のお子様だ!」

えっと……まだ勘違いしてる?
私、鯉伴さんのお子さんじゃないですよー

そう思いつつ、なぜか頬が緩み、にへら、と笑った。

「響華ちゃん!? 何してんのーっ!?」

帰ってきたリクオ君が慌てて私の前に来るが、私はあまり回らなくなってきた思考のまま、リクオ君に答える。

「リクオくん、あまいよー! おさけっておいしいねー」
「お酒ー!?」

リクオ君が納豆小僧さんに「なんで響華ちゃんにお酒のましてんのー!」と詰め寄っている光景を見てたが、なんだか身体中がぽかぽかほわほわして、つい眠ってしまったのだ。
あれから記憶がない。


「あの……、私?」

もしかしてあのまま眠ってしまって、鯉伴さんがアパートまで送ってくれた!?

そう思い、周りを見回すが見慣れた我が家ではない。
口から小さく白い息が見える。外の空気がまだ熱い頬に心地良い。
鯉伴さんの腕の中から外を良く見ると、部屋の明かりに照らされて池や庭木が見えた。

ここって縁側……?

慌てて鯉伴さんの腕の中から抜け出ようと身じろぎすると、鯉伴さんは不思議そうな顔で私に問いかけた。

「オレの腕の中はイヤかい?」

え!? そんな事はないんだけど、なんだか気恥ずかしい、です!
鯉伴さん、私、中学生ー!
子供じゃないです!

そう思いながらも首を横にぶんぶん振ると鯉伴さんはにっと笑う。

「それじゃあ別に構わねぇだろ……?それに響華ちゃんが居るとあったけぇや」
う。私はホッカイロじゃないです。

気恥かしいけど、正直私も暖かいから反論できず、黙りこくって鯉伴さんの右手にある赤い盃を見た。

え。もしかして、私を抱っこしながら縁側でお酒飲んでた!?
この寒い中を!?
部屋の中の方が暖かいのに、どうして!?

心の中で首を傾げつつ、鯉伴さんの持っている盃をまだ少しぼんやりする頭で眺めていると、鯉伴さんは私の視線に気付いた。
そして、ずい、と私の目の前に赤い盃を持ってくる。

「響華ちゃんも飲むかい?」
「え?」

私は盃を見た後鯉伴さんを見、そしてお酒の味を想像した。

もしかして、さっき飲んだお酒と同じなのかな?
甘くてすっきりしてる?

私はもう一度あの甘さを味わいたいという欲望に負けこくりと頷いた。
盃から漂ってくる香りは先ほどとは違い、日本酒ならではの強いお酒の香りがしたが、お酒は甘いという認識をした私は、どんな甘さなのだろう?と期待を胸にする。
が、盃は私の口に近づく事無く、スッと遠ざかり鯉伴さんの口に運ばれた。

鯉伴さん……。飲ませてくれるって言ったのに、見せるだけなんて酷いです!

私はそう思い憮然とするが、鯉伴さんは盃では無く自分の唇を前触れも無しに私の唇に重ねた。

は? え?

鯉伴さんの唇の感触に吃驚し、思わず身体に掛けられていた着物をぎゅっと掴む。

「んぅ……っ」

そして少し唇の角度を変えられ、ぴたりと隙間無く唇が重なると少しずつ咥内にお酒が流し込まれた。
その味は辛いし苦い。まったく甘くなかった。
しかし、唇が塞がっている為、口から出す事も出来ず嫌だけどそれをコクリと飲み干す。
と、胃の方から熱さがかけ上って来た。

さっきの甘いお酒はいつの間にか身体があったかくなり、顔が真っ赤になったのに、この急激な熱さはなんだろう!?

胃の中の熱さに気を取られていると、そのまま肉厚の舌がするりと口の中に忍び込んで来た。

「ん、むぅ……っ」

そのまま絡められ、そして喰らいつくされるかのように舌を吸い上げられる。
吸い上げられ痺れてきた舌をまた宥めるようにくちゅりと絡ませられた。
絡められ時折擦りあわされる中、触れ合う舌が暖かくて溶けそうに気持ち良い。
また頭がぼうっとしてきて抵抗する気が起こらなかった。
絡まる水音が重なった唇の間から聞こえる中、自然に鼻から自分の声が漏れる。

「……んぁ、んっ ふぁ……っ、ん、ん……」

その気持ち良さに流されるように目をゆっくりと閉じようとすると、鯉伴さんは私の両腕を首に回させた。
そして突然腹部にひんやりした感触を感じる。
その冷たさに私は目を見開く。
思考力が一瞬戻ってくる。

う、え? な、に!?
あれ? 私、また鯉伴さんとキスしてる!?
あ、れ? お酒、自分で飲める……のに

その戻って来た思考力の中、鯉伴さんに対する疑問で頭の中がいっぱいになるが、絡まる舌の熱さと心地良さ、そして腹部をゆっくり撫ぜられる感触にまた頭の中がぼんやり霞がかってきた。

あ、れ? 何か。
何か、考えないといけない、事、ある……よう、な……

「ふ……ん、ん、ふぅ……んっ」

その腹部をゆっくり撫ぜていた手は、ゆっくりと上に登ってくる。
少し、こそばゆいような感覚に襲われるがそれがだんだんと違う感覚になっていく。
むずむずするような、気持ち良いような良く判らない感覚。
その感覚に腕を震わせながら耐えていると鯉伴さんは膨らんだ胸へ手を到達させ、それを下から掬い上げ円を描くように動かし始めた。

「ふあっ……っ、やっ、んっ」

くにくにと胸が揉みしだかれ、そこから甘い痺れが全身に広がる。
その感覚に思わず頭を逸らし唇が外れた。
が、鯉伴さんの唇はすぐに追いかけてきて、私の唇を覆う。

「むぅ、んっ……っ、んっ」

絡まる舌の感覚と胸を揉まれる甘く痺れる感覚に身体がびくつく。
そして胸の中心を時々押し潰された。
首を振ろうとするが身体が片腕で抱えられていて動けない。

「ん……っ、はぁ……はむっ、ん、んっ」

ちゅくちゅくと舌を絡ませ、胸を揉まれる感覚に鯉伴さんの首へ回した腕に力が籠る。
それに応えるようにまた強く舌を吸い上げられる。
その感覚に我慢できなくなりピクッと小さく身体が跳ねた。
そのまままた胸の頂きをクニッと押し潰され、グリグリとされる。

「んっ……ふっ」

そこから甘い痺れが身体中に広がり、身体がビクビク震えた。
何故か頭の中が真っ白になる。
無意識に鯉伴さんの着物をギュッと掴むが、胸の頂きをクニクニと指で弄ばれ甘い痺れが止まない。

「はっ、ん、だめ……、んふ」
「胸だけでイッちまうたぁ、やらしいぜ? 響華ちゃん…」

そして、トサリと廊下に横たえられると鯉伴さんは私の上に覆いかぶさって来た。

「今日はいつもより先に進ませて貰うぜ。響華ちゃんが風邪ひいちまったら悪ぃからな…」

その言葉通り、鯉伴さんの舌と指に下半身がトロトロに溶かされ、何度も頭の中が真っ白になった。
そして最後に意識がプツンと途切れた。
薄れる意識の中、鯉伴さんの声が聞こえる。

「相変わらず敏感だ……愛してるぜ。響華……」

幻聴かもしれないけれど、今年一番のプレゼントを貰ったみたいで、胸の中が幸せに満たされた。

鯉、伴…さん……私も……


翌日目が覚めるといつもの自分の部屋だった。

あれ? ゆ、め?

首を傾げて周りを見回すと枕元にリボンを付けた紙袋があった。

あれ? 私が用意したプレゼント? なんで枕元にあるの?
あ。そう言えば昨日リクオ君にクリスマスプレゼント渡しそびれちゃってる!?
鯉伴さんに、も……

鯉伴さんの名前を思い出すと夢の内容がくっきりと思い起こされ、恥ずかしさに顔が真っ赤になった。

あんな夢見るなんて私、変態さん!?
ううん。ふしだらすぎたから、変質者さーんっ!?

私は自分の布団の上でぐるぐる悩んだ。

うううっ、お母さん。ごめんなさい。まだ中学生なのにもう変質者への道を一歩歩んでそうです。
でも、変質者にはなりたくないから、もう絶対あんな夢見ないようにしよう。
うん!

私はその日、人生の新たな目標を定めた。







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