この声は、リクオ君?

振り返ると真剣な表情をしたリクオ君が居た。
なんだろう?と首を傾げると、リクオ君は「ごめんなさい!」と頭を下げて来た。
何故、謝っているのか良く判らない。
クエスチョンマークを頭の中全体に発生させていると、リクオ君は申し訳なさそうに言葉を続けた。

「……ボク、好きな人が居るんだ。君の想いには応えきれない」
「は?」
「ボクが触れたいのは、響華ちゃんだけだから」
「??? 私もリクオ君しか触れたく無い。ただし、私の知ってるリクオ君」
「へ?」

意味が良く判らないような顔で目をぱちくりさせるリクオ君。

「だ、だって、君、キスはボクじゃないと嫌だって…」
「うん。でも、あなたは私を知らない。と、言うことはこの姿を知ってるリクオ君じゃないって事」
「ボクが何人もいるの……?」

眉を顰めるリクオ君に思わず笑ってしまった。

「どの世界にどんなリクオ君が居ようと私が心から愛してる人は、たった一人だけ。私を心から愛してくれるリクオ君だけ」

私の言葉に何故か頬少しを赤らめ呆けた表情をするリクオ君。
そんなリクオ君に少しだけ自分の正体を教えてみたくなった。

「リクオ君。私の名前も響華。人間の姿の時はこっちの響華と一緒だから」
「え?え?え?」
「こっちの響華を心配してくれて、ありがとう。きっとこっちの響華もリクオ君の事大事に思ってると思う」

きっとそうに違いない。
私と同一人物に等しいなら世界が違っても、こんなに優しいリクオ君を好きにならないはずない。

「ホントに!?」
「うん」
「響華、さん、かな?ありがとう!頑張るよ、ボク!」

ぱぁっと明るい表情でお礼を言うリクオ君に、笑い返す。と、横でボソッと天也お兄さんが呟いた。

「多分、こっちのボクが阻止すると思うけどね」







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