私が布団の中で目を閉じたのを確認したお母さんは、そのまま部屋を出て行った。
多分、私が目を覚ました事に安心して、家事に戻って行ったのだろう。
私は再び薄目を開けると、白い天井を見つめた。
そして先程疑問に思った事を考えてみる。
最後にはノロケ話しになったけど、お母さんは自分の意志でこの町を出て行った、と言っていた。
玉章はぬらりひょんに追い出されたと言っていたのに。
と言う事は、玉章は嘘をついていた事になる。
何故嘘を言う必要があるんだろう?
一体何の為に?
考えても判らない。
「でも、この町を出たのはぬらりひょんの所為だ、という言葉は否定しなかった……」
多分戦った時、ぬらりひょんから卑怯な手段を使われたのかもしれない。
それだったら、玉章は嘘をついてない。
ただ、この町を出て行った姿を端(はた)から見たら、追い出されたように映ったのかもしれない。
やはり、ぬらりひょん一族は許せない。
正義の鉄槌を下さないと!
「でも、四国の幹部に認めて貰うには、やっぱり奴良リクオを……」
誑かさないといけない。
先程お母さんに反対された事柄だ。
「どうすればいいんだろ?」
反対された事を実行すれば、絶対に怒られる。
私は布団を頭まで被ると、ぐるぐる考えた。
でも答えは出ない。
「あー、もう、どうしよう!」
ガバッと起き上がり、思わず叫ぶと窓辺の方から艶のある低い声が聞こえてきた。
「有永サン。元気そうじゃねぇか」
「え!?」
声が聞こえて来た方にバッと顔を向けると、窓際に腰かけた夜リクオ君が居た。
長い銀の髪を横に靡かせ、黒の着流しの上に葱緑(そうりょく)色の羽織を羽織っている。
「よう」と軽く手を上げる奴良リクオに、私は驚きで目を極限まで大きく見開いてしまった。
「なんで、ここに!?」
と、奴良リクオはニッと不敵な笑みを口元に浮かべた。
「なんでだか判んねぇかい?」
そう言うと、スッと立ち上がり、ベッドの傍まで近付いて来た。
目を丸くして見つめていると、私の頬に右手を添える。
「つれねー女だぜ。オレがここに来たのはこういう意味だ。それともオレの事が嫌いになっちまったのかい?」
こういう意味って何?
会いに来たって言いたいんだろうか?
でも、なんで私に会いたいって思ったんだろう?
敵なのに?
眉根を寄せると、突然ベッドの上に押し倒された。
!?!?
「なっ!」
奴良リクオはその端正な顔を近付けると、低い声で囁いた。
「オレがウソついてるように見えるのかい? オレはウソはつかない妖怪だぜ?」
な、な、なっ!
敵なのに、敵なのに!
心臓のドキドキが止まらない。
顔が火照る。
「は、離れ……」
「離れたら何かくれるのかい?」
はいっ!?
「そ、そ、そんなわけ無い!」
「じゃあ、却下だ」
奴良リクオは口元に楽しげな笑みを浮かべた。
うわーっ、どうしたらいいのー!?
お、お母さん、ヘルプミー!!