「家長さん!? どうしたんだい!?」
『清継くんっ! 今、妖怪に! 鏡の妖怪に襲われてるのー!』

悲痛な声が耳に届く度に胸が痛い。
後悔が次から次へと押し寄せて来る。

ごめん! カナちゃん! 私が行動起こさなかったから!
自分の保身の事ばかり考えてたから、妖怪に襲われたんだ!

「家長さん! 今、どこに居るんだい!?」
『トイレ! 学校の男子トイレ! あっ!』

途中で通信がプツンと切れる。
そして人形からは、雑音しか聞こえて来なくなった。
私は矢も盾もたまらず、屋上の入り口に向かった。
後ろから慌てたような清継君の声が追いかけて来る。

「有永さん! 待ちたまえ! 皆で一緒に探すんだ!」

でも、止まってはいられない。
私は、階段を駆け降りるとその階の男子トイレに向かった。
手洗い場の鏡を見る。
しかし、何も映っていないし声も聞こえない。
と、頭にある閃きが浮かんだ。

そう言えば、原作では主人公であるリクオ君が、鏡の中のカナちゃんを見つけた。
皆と離れて焼却炉でゴミを燃やしていたから、事情を知っているとは思えない。
ただ、偶然に鏡の中のカナちゃんを見つけた感じだった。
主人公のリクオ君が男子トイレの手洗い場に現れた理由。
それは、多分、ゴミ捨てで手が汚れたから、手を洗いに来たのかもしれない!
と言う事は、焼却炉に近い1階の男子トイレ!
現実が原作と同じとは限らない。でも!

「カナちゃん!」

私はカナちゃんが居なかった男子トイレを飛び出した。
と、屋上から降りて来た清十字怪奇探偵団の皆と鉢合わせをした。

「有永さん! 言いたい事は色々あるがそれは後だ! その男子トイレに家長さんは居たかい!?」

私は首を振りながら答える。

「ううん。いなかった!」
「そうか! 皆、下の階に行くよ!」
「判った!」

清継君の言葉に後ろに続く皆は頷いた。そして下の階に向かって駆け出す。
私も皆の後ろについて駆け出した。


しかし、1階の男子トイレには居なかった。

おかしい。

もしかして、私、半妖でもまだ妖怪として覚醒してないから、鏡の中に居るカナちゃんの姿が見えないし、声も聞こえない?
どうしよう!
カナちゃん。危険な目に遭ってなければいいけど……

胸の中に不安が渦巻く。

「おらん! どこの男子トイレなんや!」
「落ち着きたまえ! まだ、職員トイレが残っている!」
「そこや!」

清継君達が再び駆け出す。
それに気付いた私も慌てて駆け出そうとすると、後ろから名前を呼ばれた。

「あれ? 有永さん。何してるの?」

この声は、奴良リクオ君?







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