ゴールデンウィークから一ヶ月半が過ぎた。
その間、何も問題は起きず平和な日々が続いていたので、カナちゃんの誕生日に妖怪が現れる事をすっかり忘れていた。
「明日カナの誕生日なんだけどさ。プレゼント買いに行かない?」
休み時間いつも一緒に行動を共にする友人2人に話しかけられた。
カナちゃんは、男の子から呼び出しを受けていて、居ない。
私は、財布の中身を思い出しながら、頷く。
お父さんから内緒で臨時ボーナスを貰ったので、財布の中身はかなり暖かい。
うん。中間テスト頑張った甲斐があった。
そして帰り道。カナちゃんと別れると、私達はアクセサリーショップなどに寄りプレゼントを決めた。
駅で友達と別れると、氷麗ちゃんと背の高い顔の厳つい男の子(きっと青田坊)を引き連れた奴良リクオ君と遭遇した。
「あ、有永さん。今帰り?」
片手を上げながら笑顔で声を掛けて来る奴良リクオ君に、私は頷いた。
「うん。奴良君も今までグラウンドの草むしり?」
「いや、今日は学校中のゴミを全部焼却炉で焼いてたんだ」
「うわっ、一人で大丈夫だった?」
「あはは。大丈夫、大丈夫! そんなに重くなかったし」
「すごいな。でもなんでそんなに雑用ばかりしてるの?」
思わず疑問をぶつけてしまった。
しかし奴良リクオ君は、サラッと当り前のように答えを返して来た。
「そりゃ、良い人間になる為だよ!」
「は?」
いや、漫画の中で動機を知っていたけど、現実ではそんな事有り得ないと思っていた。
だって、良い人間になるには、他にも方法たくさんあるし!
例えば、ボランティアに参加するとか……
ん? でも、中学生はボランティアに参加出来ない?
いや、そんな事ないと思うけど……
うーん、と考えていると、今度は奴良リクオ君が問いかけて来た。
「有永さんはどうしたの? いつも帰りは早いのに」
あれ? 知ってた?
どうしてだろ? と疑問が沸き起こるが、聞いても仕方ない事だったので私は素直にカナちゃんの誕生日プレゼントを買っていた事を口にした。
すると奴良リクオ君は驚いたように目を丸くした。
「あっ! 明日カナちゃんの誕生日なんだ! 忘れてた!」
いっけね、と頭を掻く奴良リクオ君。
もしかして幼馴染だから、毎年誕生日プレゼントあげてる?
そう思うと何故か急に胸がツキツキと鈍く痛む。
私はそれを振り払うように普通の顔を作り、奴良リクオ君を見る。
いや、だって以前笑顔を見せたら固まられたのだ。
きっとすごく怖く醜い顔だったんだろう。そんな顔、奴良リクオ君には向けたく無い。
「プレゼント選び、頑張れ! じゃあ……」
「あっ! 有永さん、待って!」
「ん?」
そのまま、改札口に向かおうとしたら、腕を掴まれ止められた。
掴まれた場所が、何故か熱い。
うわっうわっ、手、手っ!
滅多に男の子と触れ合わない所為か、緊張で身体が固まった。
そんな私に構わず、奴良リクオ君は真剣な顔で口を開いた。
「ごめんっ、良かったら買い物手伝ってくれるかな?」
「え?」