やって来ました。ゴールデンウィーク!
私は今新幹線の中に居ます。
そう。清十字怪奇探偵団の皆と一緒に。

ゴールデンウィーク前にカナちゃんから、団員全員で捩目山という所へ合宿に行く、と言う事を伝えられた。
捩目山って言ったら、原作では牛鬼との戦いがある。
そして、温泉に浸かっていても、妖怪に襲われるという最低なハプニングも。

行きたく無い。
そう。行きたく無かった。
だが、別荘には超豪華な食事が用意されるらしい。
超豪華というと、もしかして超高級ブランドの牛肉や熟成肉が……!!

思わず口の中に唾が溜まった。
それをゴクリと飲み込む。

実は私は何故か小さい頃から、肉が大好きなのだ。前世では普通だったのに。
お母さんも大好きなので、食卓には肉料理が毎日のように用意される。
でも、お父さんは、普通のサラリーマンなので滅多に超高級肉にはお目にかかれなかった。
超高級肉の存在に心がグラグラと揺れる。

怖い妖怪に襲われたくない! 危険な目に遭いたくない!
でも……超高級肉……。きっと舌の上で蕩けるんだろうなぁ……
あ。よだれが。

と、カナちゃんが「超高級肉……」と呟く私を見て首を傾げた。

「良かったら、私の分いる?」
「ありがとう! 行く!」

私の心は、カナちゃんの言葉で決まった。

いざ、捩目山別荘!
待ってて! 私の超高級肉ー!


そして冒頭の場面に戻る。
新幹線の座席は片方が6席通路を挟んでもう片方が4席だった。
6席の方には、奴良リクオ君、つららちゃん、カナちゃん、巻さん、鳥居さんが座り、4席の方には、清継君、島君、ゆらちゃん、そして私が座る。
と、隣の窓際の席に座ったゆらちゃんが、眉を寄せながら心配そうに声を掛けて来た。

「有永さん。怪我、大丈夫やったか?」
「うん。もう痛くない。大丈夫!」

私の言葉にホッと表情を緩ませる。

「良かった……」

と、清継君が耳ざとくこちらに顔を向け、会話に割って入って来た。

「有永さん! 君もこの前の日曜日、一番街に居たのかい!?」
「あ、うん」

何も考えずに頷くと突然身を乗り出して来た。

顔、近っっ!!!

「もしや、主と会ったんじゃないだろうね!」

清継君の主と言うと、奴良リクオ君が変身した夜の姿の事だ。
私は曖昧に頷く。
と、清継君は頭を抱えながら激しく横に振った。

「なぜ、転校生の君が主に会えて、ボクは会えないんだー!」

通路を挟み、清継君の近くに座っている奴良リクオ君は視線を逸らし、ははは、と乾いた笑い声を洩らす。

「妖怪運が無いんじゃないのー?」

同じく通路を挟んだ席に座っていた巻さんが、ニヤと笑いながら、からかいの言葉を口にする。
すると、清継君は頭を抱えた格好のまま、ハッと目を見開く。
そして、上着の内ポケットから、トランプの箱を取り出した。そして大きく腕を振り上げ、カードの入った箱を掲げた。

「良し! みんな。目的地に着くまでこれで妖怪修行だー!」

そんな清継君を皆はキョトンとした目で見つめた。

「「「「「は?」」」」」







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