放課後になり、カナちゃん達と一緒に浮世絵町駅まで帰ると、私は電車に乗った友達2人を見送った。
と、隣で一緒に友達を見送ったカナちゃんが不思議そうに小首を傾げる。

「舞香ちゃん?もうすぐ帰りの電車が出るのにあっちのホームに行かなくていいの?」

そう。カナちゃん達とは反対側なので、帰りのホームも違う。
私はその言葉に頷いた。

「うん。ちょっと用事がね。でもカナちゃんもさっきの電車に乗らなくて良かった?」
「私も舞香ちゃんと一緒! ……ちょっと、ね……」

途中で何か思い出したらしく、乾いた笑い声を洩らしげんなりした顔になる。
「そうなんだ」と相槌を打つが、げんなりした顔が気にかかる。

どうしたんだろ?

と、ふと原作を思い出した。

確かカナちゃんは、大の怖がり。
原作では、リクオ君と一緒に歩いている所を清継君に発見されて、否応なしに呪いの人形検証に参加するようになったんだっけ?
どうしてリクオ君と一緒に歩いていたかは謎だけど。
でも、怖がりなのに呪いの人形検証に巻き込まれるなんて、カナちゃんも気の毒かもしれない。
頑張れ、カナちゃん。
隣のカナちゃんを見ながら心の中でエールを送っていると、カナちゃんは踵を返した。

「舞香ちゃん。そこまで一緒に行こっ!」
「うん」

私達は揃って駅から出る。すると、向こうから奴良リクオ君が「カナちゃん!」と手を上げて駆け寄って来た。
後ろには氷麗ちゃんがついてきている。
奴良リクオ君は、私とカナちゃんが並んで立っているのを見ると目を丸くした。

「有永さん!? 有永さんも清継君家に行くの!?」
「え?そうなの?」

リクオ君の言葉にカナちゃんも驚いたように私を見る。
私は素直に頷いた。
そんな私にリクオ君はサラリと問いかける。

「じゃあ、有永さんも清十字怪奇探偵団に入ったんだ」
「え?」

清十字怪奇探偵団?
それって、なんだったっけ?

私は頭の中の原作の知識を探る。

あ。確か、清継君が作る部の名前だ。妖怪の研究を目的にする部、だったはず。
えっと、私、入るなんて一言も言ってないんだけど、「マイファミリー」って声を掛けてきたから、清継君の中では、もう部員確定されてる?
数珠と霊符を持っていると言えども、なんだか複雑な気持ちだ。

「えっと、そうかもしれない。多分……」

問いにそう返すと、奴良リクオ君とカナちゃんは顔を見合わせ揃って苦笑いを零した。
ご愁傷様、って感じだ。
多分、自分達もそんな感じなので、察してくれてるらしい。

サンクスです。カナちゃん。奴良リクオ君。


それからしばらくして、清継君と島君、そして花開院ゆらちゃんの3人と合流し、皆で清継君の邸宅へと向かった。
清継君の自宅は、原作で描かれている通り、すごい豪邸だった。
別荘を持っているのも頷ける。
清継君に先導されながら広い廊下を歩く。
あちらこちらに高そうな花瓶や絵画がかかっている。

はぁー……お金ってあるところにはあるんだなぁ……

しばらく歩くと、重厚な木目のついた扉の前に辿り着いた。それを清継君は開く。
と、中は博物館のようだった。様々な壷や鎧。そして時計みたいなものが棚の上に並べられている。
そして中央には大きな透明のケースが置かれていて、中には年代物の巻き物や茶碗がズラリッと置かれていた。

「はー……すごい」

そう呟きを洩らすと先頭に立っていた清継君が得意げに口を開いた。

「ふふふ……ここはボクのプライベート資料室さ」
「と言う事は全部清継君のものって事っすね!」
「いや、今は大学教授でもある祖父のものも置いてあるが、そのうちボクの資料で埋め尽くす予定さ」

ほほう。と、言う事はこのガラスケースに入ってる年代物の巻き物や茶碗は、お祖父さんのものということなんだねー
と言う事は歴史を専攻してるのかな?
て、いうか、茶碗が渋い。

私は妙な感想を持ちつつ茶道で使われていそうな茶色の茶碗に魅入った。
そんな私に気付いた清継君が、サラリと言い放った。

「有永君。見るのは構わないが、ケースに涎は垂らさないでくれたまえよ」
んな!?

思わず袖で口元を覆いつつ反論を口にしようとした。

「よだれにゃんて……!」

……っっ
あうあうあう……にゃんって何!にゃんって!!

私は黙り込むと、恥ずかしさにその場で項垂れた。







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