「舞香ちゃん、ボクも半分持つよ」
「リクオ君! 神!!」

私とリクオ君は、宿題のプリントの束を抱えながら、昼の廊下を職員室に向かって歩いていた。
宿題忘れの罰である。
数学だけでなく、全ての宿題を集めさせられ、職員室に運ぶ事となったのだ。
でも………

「おーもーいーっ、職員室遠すぎっ!」
「舞香ちゃん、もう少しボクが持つよ?」
「いやいや、いーよ。リクオ君、私の倍以上持ってるし!」
「そっか」

笑顔で応えるリクオ君に胸が熱くなる。
罰としてプリント職員室まで運ばないといけなくなったけど、こうしてリクオ君と一緒に居られる時間が凄く嬉しい。
嬉しさで暖かくなった胸に自然と顔が緩む。
腕は紙の重さでキツイけど、心の中は幸せでいっぱいだ。
はっ!? だめだめっ、顔にやけさせるのガマンッ、我慢!
腕を痺れさせながらも、浮き立つ気持ちと闘いながらで歩いていると、突然前方から何かがぶつかって来た。

「わっ!!!」
ドスンッ!

ものすごい衝撃によろめき、尻もちをついてしまう。
でも根性でプリントは死守!

「舞香ちゃん!? 大丈夫!?」
「いたたた、うん、大丈夫。ありがとうー」

プリントの束を横に置くと、差し出されたリクオ君の手を借り、起き上がる。
と、前方には見たことも無い程可愛い女の子が、「やぁん、いったーい!」といいながら座り込んでいた。
ふわふわな茶髪を胸元まで伸ばした女の子。
小さい卵型の顔にリップを塗っているのか、プルンとした桜色の唇。
まつ毛も長く、ビスドールのような美少女だった。

ほっそりした体躯で女の私でも守ってあげたくなるような女の子。
見たことない子だけど、多分、別クラスの女の子?

あ!
「だ、大丈夫!?」

私は慌てて、女の子に向かって手を差し出す。
私の前方不注意ー!

でも、私の声は聞こえなかったのか、その女の子は私の伸ばした手を取らない。

ん? 
「あの?」
痛みで私の声が聞こえない?

不思議に思っていると、私の横からリクオ君もその女の子に声を掛けた。

「君、大丈夫?」
「ううん、痛くて立てなーいよぉ」

女の子はリクオ君の声に即答する。

んん?

違和感を覚え、私は心の中で首を傾げる。

こんな美少女が、わざと私の声を無視したって事は無いから、単に声が聞こえなかった??

疑問を抱く中、女の子は可愛らしい顔を嬉しそうにほころばせながら、伸ばされたリクオ君の手を取る。

「保健室行く?」
「ありがとうーっ」

女の子は立ち上がるとリクオ君の腕にピトッと寄りかかった。
そのとたん、後ろから冷気を含んだ風が流れて来る。
モヤッとした気持ちがその冷気によって、パッと吹き飛んだ。

はっ!? これはもしや氷麗ちゃんっ!?

バッと振り向くと、壁に隠れながら般若のような顔で、こちらを見ている氷麗ちゃんがいた。
氷麗ちゃんはその身体の周りに、小さな氷の礫を舞い踊らせている。
横を通る人はキョロキョロ周りを見回しながらも、両腕で自分の身体をさすっている。

「氷麗ちゃん、冷気漏れてる!?」

と、思わず突っ込んでしまった私の言葉が聞こえたのか判らないが、リクオ君こちらを向いた。
その顔は笑いながらも、何故か困ったような表情が混ざっていた。

んん?
「舞香ちゃん、ボクこの子保健室連れてくから」
「あ、う、うん…」
「青、プリントお願い」
「へい」

青…?って、
突然私の横にぬっと巨体を現す青田坊。

「わわっ!」
おおっ、改めて見ると凄い大きい!

目を見開き、その巨体を見上げていると、またリクオ君が口を開く。
今度は、はっきりと困惑しているような声音だ。

「あの、あまりくっつかないで貰えるかな?」
「わたし、支えて貰えないと歩けそうにないのぉ。ね?」

そう甘えたように言いつつ、目の前の美少女は胸をリクオ君の腕に押し付ける。

推定、Cカップと見た!!
心なしかリクオ君の耳が赤い!
そう言えば、リクオ君はオッパイ星人!!!!

ムカムカとした気持ちとともに、何故か泣きたいような気持が湧き出してきた。

あ、あれ?なんで…?私……








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