あれから、お父さんに清継君家まで送って貰った。
帰る時に連絡を入れるよう言われ、私は直に頷く。
いや、だって一人で帰るのなんて無理。
そして、豪華絢爛と言ってもおかしくないほどの立派過ぎる門をくぐると、清継君家の本邸らしき建物に辿り着いた。
チャイムを鳴らすと、メイドさんが現れ、応接間に案内される。
本当に金持ちだなー、と思っていると、開かれたドアの先に居たのは、ジュースが入ったコップを両手で持ち浴衣を着たカナちゃんと、普通の半袖のTシャツを着たリクオ君だった。
2人は黒張りのソファーに並んで座っている。
そして向かいのソファーには氷麗ちゃんが座っていた。
リクオ君!?
リクオ君の顔を見た途端、身体が何故かピキンッと強張る。
そして脳裏に浮かび上がる夜リクオ君の唇の感触。
抱きしめられた暖かさ。
「うわーっ!」
ボボボッと顔が急速に熱くなり、思わず開けられたドアを再びパタンッと勢い良く閉めた。
うわっうわっうわっ、なんでリクオ君が居るのー!?
って、そりゃ、清継君主催の花火大会だから居るよね!
うわっうわっ、なんだかすごく恥ずかしいーーっ!
その場にうずくまり、熱くなった頬を両手で押さえていると、内側からキィッとゆっくりドアが開かれた。
「舞香ちゃん?」
「どうしたの?」
困惑したカナちゃんとリクオ君の声が降って来た。
「い、いや、なんでもないよ!」
でも、押さえた両頬は熱くなったまま熱がなかなか引かない。
顔が上げられない!
うわーっ、困ったー!
赤い顔のままだとなんで恥ずかしがってるのか突っ込まれるー!
とカナちゃんが私の傍に来て、顔を覗き込むような気配がした。
そして心配そうな声音が耳に入って来る。
「舞香ちゃん、気分悪いの? 大丈夫?」
違うーっ!
そのまま私は頭を横に振った。
でも、このままだと、カナちゃんを心配させたままだ。
うーっ、元気なのに!
もう、もう、もうー! カナちゃん、心配させたくないっ!
「ていっ」
私は自分の両頬を勢い良くバシッと叩いた。
「いっつーっ!!」
「「舞香ちゃん!?!?」」
驚いたような2人の声が重なる。
そんな2人に私は顔を上げ、両頬のジンジンした痛みを堪えながら笑顔を作った。
「大丈夫ー! ちょっと頬に虫がいただけ!」
「そう?」
「虫?」
首を傾げながらも素直に納得するカナちゃんと納得し辛そうに変な顔をするリクオ君。
納得しといて!リクオ君!
そう心の中で突っ込むと、私は2人の身体を部屋の中に押し入れつつ自分も応接間の中に入った。
ふう、誤魔化せたよ! 私!
グッジョブ!
そして、まだ怪訝な顔をするリクオ君を置いて、私はカナちゃんと雑談をしながら、まだ来てない皆を待った。
「やあやあ、君たち! 待たせたね!」
しばらくすると清継君が、残りのメンバーを後ろに引きつれ応接間に姿を現した。
参加するのは、私。カナちゃん。リクオ君。氷麗ちゃん。巻さん。鳥居さん。島君。そして主催者の清継君の8人だ。
私達は、清継君に引き連れられながら、どこかへと移動する。
と、途中、だんだんと食欲をそそるような良い香りが鼻を擽って来た。
これはトウモロコシやイカを焼く香り?
なんで?
はて? と不思議に思っていると、しばらくして広い庭へと出た。
そしてそこには、まるでお祭りの時のごとく屋台がズラリと並んでいた。
「「「「えぇえええーー!?」」」」