カナちゃんも迫りくる化け物の顔を見たのか、「キャーッ!」と大きな悲鳴を上げる。
と、私達の横を2つの影が通り過ぎた。
いつの間にか現れた鉄紺色の僧衣を纏った巨大な大男が、目の前の化け物を数体纏めて殴り飛ばす。
そして、後方の化け物達を長い黒髪に白い着物を纏った美少女が、凍った息を吹きかけ凍らせた。
それだけで、化け物達は倒れ伏し動かなくなった。
目の前の出来事に頭がついていかず、呆然としていると、突然現れたお男と美少女は、残りの化け物に向かって口を開いた。

「失せなさい」
「ここはテメーらのシマじゃねぇぞ。ガキども」

その言葉に残った化け物達は、四方八方に逃げ去って行った。
奴良リクオ君は、素っ頓狂な声を上げる。

「え!? な、何!? どういうこと!? なんで氷麗と青がいんの!?」

唖然としていた私の耳に聞き覚えのある名前が入って来、ハッと思考力が蘇る。

つららとあお、?
って、『ぬらりひょんの孫』に出て来る妖怪達の名前だ!
嘘!?

もう同姓同名で片付けられない。完璧にここは『ぬらりひょんの孫』の世界だ。

私、『ぬらりひょんの孫』の世界に生まれてしまったー!?
と言う事は、さっきの化け物たちも妖怪。
大男と美少女の2人と話している奴良リクオ君も本物の『ぬらりひょんの孫』の主人公だ。

私はどうしていいか判らなくなった。
大好きな漫画の主人公に会えるなんて、すごく嬉しい。
天にも昇る気持ちだ。
これがはじまりの事件である旧校舎編だとすると、主人公であるリクオ君はこれから妖怪同士の戦いに巻き込まれつつ、奴良家3代目総大将として成長して行く。
と、ハタとある事に気付いた。

そう言えば、番外編に今通ってる学校内でも、妖怪がいるという話しがあったっけ?
それに、どこかに置いてけ堀があったような気が……
この町に住んでいたら、妖怪遭遇率が高くなる!?

背中に冷や汗がダラダラと流れる。
私は、家に帰ったら、悪霊退散のお札等をネットで検索し、購入しようと決意した。
どうして『ぬらりひょんの孫』の世界に生まれて来てしまったのか判らないけど、生まれて来てしまったのは仕方がない。
妖怪に会っても戦って勝ち、生き残る!
私は、まだ見ぬ妖怪と遭遇する事に固く腹をくくった。







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