しっと?

「しっとって、嫉妬?」
「それ以外に何があるんだい?」
「えーっと、何に対して?」
「は?」

私の発した素朴な疑問が想定外の言葉だったからなのか、信じられない、というような表情で私を凝視する夜リクオ君。
その中、私は嫉妬の意味について考えを巡らせた。

嫉妬って好きな人を別の人に取られたりしたら抱く感情なハズ。
好きな…………、

と私は唐突に温もりを感じる程覆い被さって来ている夜リクオ君の存在を意識してしまった。
いっきにぼぼぼっと火が付いたように顔が熱くなる。
そして心臓が大きく脈打ちだした。

「うおあっ!?」

そそそそりゃ、リクオ君の事は、す、す、すで始まる気持ちだけど!
す、すの次の言葉を思い浮かべるのが、恥ずかしいーーっ!

自分の気持ちが恥ずかしくて心の中で悶えていると、夜リクオ君はにやりと笑い低い声で囁かれた。

「舞香。やっと自覚したかい?」

自覚、自覚って、

「うー、うー、ちがーうっ! この気持ちと嫉妬は別物! 私は 嫉妬なんてしてないーっ!」

顔を赤くしたまま思い切り反論すると、夜リクオ君は面白そうな顔をした。

「淡島に嫉妬したから、怒ってんだろ?」

その言葉に淡島のたわわに揺れる大きな胸を思い出す。

そりゃあ、羨ましいったら、羨ましい!!
それを見たリクオ君には、嫌な気持ちになるけど、これは嫉妬じゃない!

「違うったら、ちがうーっ」
「へぇ、それにしちゃあ、動揺してるじゃねぇか」
「そ、そ、それは、顔が近いからー! なんで顔近付けるのー!!」

と、夜リクオ君はまた面白げに薄く笑った。

「そりゃあ、舞香の顔をもっと見てぇからに決まってんじゃねぇか」

その言葉に心臓がまた大きくドクンと脈打つ。
だけど、その面白げな表情に過去の夜リクオ君の所業を思い出した。

これって………、またからかわれてるーーっ!?
うー、うー、うーっ、真面目に答えてたのにーっ!

自分がうろたえていたのが、凄く悔しくなる。

こうなったら……、先制攻撃!

私は首を持ち上げると間近にあるその筋の通った鼻をかぶっと噛んでやった。
すると、夜リクオ君は目を細め何故か見た事もないような優しい目で見つめて来た。

ん?
何か、反応がいつもと違う?

不思議に思っていると、夜リクオ君は私を見つめたまま、信じられない事を口にした。

「ばぁか。好きだぜ。舞香」

は?

端正な顔が更に近づいたかと思うと、唇の上に柔らかい感触と温もりが重なった。








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