き、聞かれた!?
傍に居るならリクオ君の方がいいって聞かれたー!?
ってちょっと待て、私!
お見舞いに行った時思い切ったハズなのに、どうしてそう口走ってしまったんだろ?
私、まだリクオ君の事が、好き……?
うー、未練たらしい!
目の前のリクオ君は、絶対最終的には氷麗ちゃんと結ばれるんだから、私の気持ちが横槍入れてはダメダメッ!

私は頭を横にぶんぶんっと強く振る。
と、茨木童子が夜リクオ君の言葉に応えた。

「ひ弱な奴はすっこんでろ。オレはその女を連れて行く」
「誰が連れて行かせるかよ……!」
「邪魔をすんのかぁ? なら……死ねよ」

茨木童子が2本の刀を構える。
夜リクオ君も誰かの刀を借りたのか、右手に握っている刀を構えた。
と低く野太い声が頭上から茨木童子を呼んだ。

「茨木童子。何をしている! 晴明様に続くぞ!」

それは鬼童丸だった。
地獄への門の前でこちらへと振り返り、こちらを見ている。

「今、行く。この女を連れて行くから待ってやがれ」

そう宣言する茨木童子。

「やらせねぇ! 舞香はオレの女だ……!」

は?

想像もしていなかった夜リクオ君の言葉に私は目を点にした。

オレの女ってどゆ事?
氷麗ちゃんを好きになるハズのリクオ君が、私の事好きになるはずないし……
あ!! もしかして、夜リクオ君は私の事からかう道具みたいにしか見て無くて、この道具はオレのものだ、的な感じ!?

「ちょっ、私、玩具じゃないよ!?」

そう抗議するが、何故かスルーされ、目の前の2人の刺々しい会話は進んだ。

「おめーのおんなぁ? 違う、オレのだ。オレが見つけたんだ」
「てめぇが制御できるような女じゃねぇ」

制御不能の玩具扱いー!?

と、途中で鬼童丸が呆れを含んだような声で、茨木童子に再び声を掛けた。

「おい、茨木童子。門が閉じるぞ!」

茨木童子はちっと舌打ちすると、私の方に鋭い視線を向け、口を開いた。

「女。オレが帰るまで待っていろぉ」
「やだっ!」

咄嗟に私の口から言葉が飛び出す。

なんで私が帰りを待つことになるのだろう?
真っ平ごめんだ。
速攻で忘れたい!

地獄の門の向こうに飛び去る茨木童子に私は小さくべーっと舌を出した。
夜リクオ君は茨木童子が姿を消すのを確認すると、くるりとこちらへ振り向く。

「舞香。大丈夫だったかい?」
「ん? あー、うん。大丈夫、大丈夫」

こくこく頷くと夜リクオ君は軽く息を付き、お父さんの方へ視線を移動させた。

「あんたは確か……、舞香の親父さん?」
「やあ、奴良君。頑張ったみたいだけどボロボロだね。早く手当を受けなさい」

その言葉に私はお父さんの能力を思い出した。

「お父さん! そう言えば傷とか治癒できるんだよね! ね、ね、リクオ君も治して!! お願い! 私の事もぱぱって治したんだよね!?」
「どういう事だ?」

私の言葉に眉を顰める夜リクオ君。
そんなリクオ君に説明しようと口を開く

「あ、お父さんって実は……」

が、お父さんの手がそっと私の口を塞いだ。

「むん?」
「こら舞香。簡単に言ってはいけないよ」
「むむ……? ぷはっ、え? でもお母さんにバレなきゃいいんでしょ?」
「うん、でもね、ボクは緊急を要する時以外は使わないと決めているんだよ」
「え!? そなの!?」

お父さんの深い事情を知って、軽々しく頼んだ自分が恥ずかしくなる。

でも、こんなにボロボロだけど治癒しないって事は、緊急に治さなくても大丈夫な傷って事で……

私は、大怪我を負ってないと知り、ほっとした。
お父さんが柔らかい声で夜リクオ君に謝罪する。

「すまないね。奴良君」
「いや……」

短く応える夜リクオ君。
と、自分が鬼に攻撃された傷の事を思い出した。

「あ、じゃあ、私の時は……、そっか、死にかけてたんだっけ?」

そりゃ緊急を要するよねーっ

うんうんと呑気に頷きそう考えていると、目の前の夜リクオ君が私の左肩をぐっと掴んできた。

「おい、そりゃどういうことだ?」
「え?」

と、夜リクオ君の後ろから可愛らしい声が突然響いた。

「ごめんなさいっ! リクオ様! 有永さんを守れませんでした!」

それは頭を90度下げた氷麗ちゃんだった。
夜リクオ君は氷麗ちゃんの方に視線を向ける。

「有永さんは、私を庇って……本当にすみませんっ!」
「………」

無言の夜リクオ君は今度はこちらに視線を戻すとじっと私を見つめた。

「舞香……」
「ん?」
「守ってやれなくて悪ぃ……」
「あー、別に責任感じる事ないよ! リクオ君は敵との戦いに一生懸命だっただけだし!」

そう言い軽く笑うと、突然夜リクオ君の方に引き寄せられ、抱き締められた。

うえお!?

心臓がバックンバックン騒ぎ出し、顔に血液が集まり熱くなる。

なに!? なにがおきてんのー!?

思考力が低下し、ぐるぐると頭の中が混乱する。
と、近くでお爺さんの渋い声が聞こえて来た。

「おー。おー。熱いのう、リクオ」

え? え? この声ってもしかしてぬらりひょんさーん!?







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