は、恥ずかしー!
すごく、恥ずかしい!
いや、誰も聞いてないから、恥ずかしがる事なんて全くないって判ってるんだけどっ!
何かやっぱり、恥ずかしいっ!!
私は顔を両手で覆い、頭を畳に付けて羞恥に身悶えした。
顔から火が出るように熱い。
うー、恥ずかしすぎて顔の熱が引かない。
こうなれば、自分の心に言い聞かせるしかない!
うー、恥ずかしがる必要無し。恥ずかしがる必要無し。これは、あの気持ちを無くす為の行為だから!
恥ずかしく、無い!
何度も何度も繰り返し私自身に言い聞かせる。
と、だんだん羞恥心が薄まって来た。
私はようやく頭を上げ、両手を顔から外すと、ほうっと安堵の息を付いた。
「うん、薄まった。顔も熱くない」
顔を軽くぺちぺちと叩くと、私はリクオ君の方に身体の向きを直した。
よっし、吐き出したから、あんな気持ちにならないはず!
そう思ったのに、リクオ君の寝顔を見たとたん、心臓がドキンッと大きく跳ね上がった。
さっきと同じような気持ちが、後から後から溢れ出て止まらない。
私はその気持ちを振り払うように頭を振る。
「心臓が跳ねたのは、気のせいっ、絶対気のせい!」
うん、この気持ちも気のせい!!
私は目を閉じ、大きく深呼吸を繰り返した。
「スーハー、スーハー、ふー……。よしっ、今度は大丈夫!」
再び目を開けると、鼓動の速さは緩くなっていた。気持ちも抑えられたのか、少し騒めきは残ってるけど大部分は凪いでいる。
安心すると、私は再びリクオ君の寝顔を見た。
あ。少し胸の奥が痛いけど、大丈夫っぽい!
ほっと息を付くと、そのままリクオ君を見続けた。
と、ふいにいたずらめいた考えが浮かんで来る。
「今、顔に落書きしても絶対気が付かないよね」
落書きされたリクオ君の顔を想像し、ぷぷっと笑いが零れるが、残念ながらここにはマジックは無い。
「逆襲になるかもしれないのになぁ……」
でも、ふと考える。
相手の反応が判らなければ逆襲には、ならないのかも……
「そだよねー。リクオ君が起きるのは遠野の地だし、リクオ君の驚く顔が見れないのは、なんだか悔しい」
うーっ、と私は唸ると寝てるリクオ君の頬に手を伸ばすと、むにっと両頬をつまむとそのまま外側に引っ張った。
触れた感触に胸がドキドキし出すのは、無視をする。
「早く、おーきーてー!」
眠ったままのリクオ君は「うーん」と眉を顰めながら呻くが、目を開ける様子は無い。
なんだか、リクオ君の苦しむ事はしたく無くて、私は頬をそっと離した。
元の表情に戻ったリクオ君をマジマジと見る。
痛みを感じて呻くって事は、眠りが浅くて何か夢を見てるって事?
うん。眠りが深かったら、呻き声も上げないと思う。
どんな夢見てるのかな?
原作であったように、アイドルのマネージャーでもやってる夢でも見てるのかな?
それとも別の夢?
と、またさっきの恥ずかしさの元凶である”愛しい”という気持ちが込み上げて来た。
それを抑えるように息をぐっと止める。
この気持ちは気の所為、気の所為、気の所為……っ!
と、突然、向かい側にある襖がスパーンと開いた。
「そこまでよ! 有永! 若には一本も手を触れさせませーんっ!」
現れたのは、たすき掛けを付けた氷麗ちゃんだった。