そんなリクオ君がすごく気になって、じっとリクオ君を見ていると、清継君が不思議そうな顔をこちらに向けた。

「おや? 有永さんは、京は苦手かい?」
「ううん、京って行った事ないし、あんまり知らないし、どこを観光するのかなーって」
「有永さん! 観光じゃない! 妖怪巡りに決まってるじゃあないか!」

私の言葉に反論する清継君に「歴史はどーしたのよ」と巻さんや鳥居さん達から半眼の目が向けられる。
でも清継君はそんな視線もお構いなしに、胸を張った。

「はっはっはっ、歴史はついでだよ、ついで!さあ、奴良君、君も行くだろう!? 何しろ名誉会員だからね!」

リクオ君は口を閉じ、眉を顰め少し考え込むと清継君に向けてニコッと明るく笑む。

「おじいちゃんに聞いてみるよ」
「へ?」「は?」「え?」

みんなリクオ君のセリフに目をきょとんとさせ、首を傾げた。

「なんで旅行行くことおじいさんに聞くの?」
「普通、親じゃね?」
「そうよねー……。リクオ君おじいちゃんっ子だったっけ?」

鳥居さんと巻さんとカナちゃんが、疑問の言葉を口にする。

あー、多分、ぬらりひょんさんに羽衣狐の事を聞く気なんだ。
そして、その後、遠野修業に放り出されるんだよね。
その中、遠野妖怪達と友情を深めるんだよね。

原作の出来事を頭の中でなぞっていると、ふいに男風呂の中に女の身体になった淡島さんが乱入するワンシーンを思い出した。
それと共に、なんだか胸の中がむかもやっとし出す。

ん? なにこの気持ち?
なんで、むかむかもやもやするんだろ? 

自分の胸に沸き上がる感情に首を傾げていると、リクオ君は「ボクのおじいちゃん、京の妖怪に詳しいんだ」と言い土手の階段に向かって駆け出した。

「へー? 奴良君のお爺さんって妖怪に詳しいんだね」
「紛らわしい言い方すんなよなー」
「お爺さんってあの小柄な人よね。清継君と同じ趣味持ってたんだ……」

駆け去るリクオ君の後ろ姿に、皆は思い思いの言葉を呟く。
と、清継君がイキイキとした表情で、声を張り上げた。

「流石、奴良君。下調べに余念が無いね! はっはっはっ、ボクも燃えて来たぞぉー! 皆、下調べが終わったら京へ出発だよ!」

おー! と皆で声を上げる中、ふとお母さんとお父さんの顔を思い出した。

「って、ちょっと待って!?」
「おや? どうかしたのかい? 有永さん」

原作の記憶を辿ると一週間は旅行に出かける事となる。
邪魅の時でも、その事を話した時、すぐさまお母さんに止められた。……、まあ、お父さんが許してくれた事でお母さんも折れたけど……
今回は2泊くらいの短い旅行じゃない。
絶対、反対される! 優しいお父さんも許してくれるか判らない!

「旅行……、行けないかも……」
「え!? 何故だい!? 有永さん!!」
「えー、行こうよー! 皆で旅行、きっと楽しいよ」
「そうだよ、有永ー、人数少ないとつまんないじゃん」
「そうよ! 行こうよ、舞香ちゃん! きっと京にも美味しい肉料理いっぱいあるかも!」

信じられないように目を見開く清継君に、口を尖らせ不満げに声を出す鳥居さんと巻さん。そして両手を握りしめ力説するカナちゃん。
私は最後のカナちゃんの言葉に心がぐらついた。

美味しい、肉料理!?!?
えー! どんなのがあるんだろ!?
京都料理知らないから、想像がつかないけど、あったら食べ逃す事になる!

「い、行く! っていうか、行きたい! お父さんとお母さん、説得してみるよ!」

そう言うと、巻さんが私の頭をグシャグシャッと掻き混ぜる。

「偉いっ! 良く言った、有永!」

後の3人も嬉しそうに顔を輝かせた。
そして、テンションマックスの清継君の締めの言葉で、解散となった。

よっし、お母さんとお父さんを絶対、説得するぞー! 
肉料理の為に!!








- ナノ -