旧校舎の中も外観と同じく老朽化していた。
板張りの廊下は、所々割れて剥がれている。教室の扉や窓も廊下側程割れてはいないが、ひび割れていた。
天井にはあちらこちらに蜘蛛の巣が張っている。
空気を吸い込むとカビっぽい臭いがする。

天然パーマの男の子の後ろに続く体格が小柄な男の子が口を開いた。

「人が出入りしてる雰囲気……ないっすねぇ」
「はっはっはっ、さっき通った道以外ここには来れないからね。危なくて誰も近寄らないさ!」
当り前。
誰も夜中に高速道路を横切って、ここまで来ようとは思わない。

小柄な男の子の言葉に続けた天然パーマの男の子の言葉に心の中で突っ込みを入れる。
と、暗闇のどこかで、ピチャン、ピチャンと水音が響いた。
思わず身体がビクッとなり、心臓が縮こまる。

何? 水、洩れ?

思わず周囲を伺ってしまう。
と、左斜め先。廊下に設置されたタイルに囲まれた手洗い場が見える。
きっとそこで、昔の学生達が手を洗ったり、お弁当の後歯磨きしていたのだろう。
ホッと胸を撫ぜおろす。
実は妖怪は信じてないが、幽霊はいると思っている。
だって、この身体になる前、霊感のある友達が居たから。
その友達が自分の体験談をたくさん話してくれた。
それを思い出し、背筋がゾクゾクとし始める。

いや、私、霊感無いから見えない。見えない。
怖い事なんてない!

そう自分に言い聞かせながら歩いていると、後ろから奴良リクオ君が声を掛けて来た。

「有永さん」

その突然の呼びかけに、思わずビクッと身体を揺らし、「ひゃい!?」と間抜けな返事をしてしまった。

あわわわ、なんでこの口は、変な事をー!

口を押さえながらそっと振り向くと、奴良リクオ君はおかしそうにぷっと吹き出していた。

いや、変だったのは判るけど、笑わなくてもいーじゃないの!

内心、むっとしていると奴良リクオ君は、「ゴメンゴメン」と謝って来る。
そして、吃驚するような言葉を続けて言った。

「怖かったらボクに捕まってていいよ?」

え!?







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