電車に乗り、やって来ました遊園地!
キャー! と言う悲鳴と共にゴウッ、と言う音が響き渡る。
そして、周りに溢れる楽し気な声。
おー! すっごくテンション上がるよ!
「やっぱり、最初はジェットコースターだよね!」
私は真っ先にゲートをくぐると後ろの3人を振り返り、ジェットコースターを指さしながらウキウキした声で口を開いた。
しかし賛同の声は上がらない。
「やっぱり最初はお化け屋敷だよな! 奴良! ……そして及川さんと……」
「あはは、ボクはジェットコースターでもいいけど、出来れば最初は大人しめのヤツがいいかな、なんて……」
リクオ君の肩に手を置きながら何か夢見ているようにうっとりとした目をする島君と、後ろ頭に手を当あてながら苦笑しているリクオ君。
むぅ、遊園地ってそういうもの?
少しむくれていると、島君がハッと正気に戻り、何かを思いついたように手をぽんっと叩いた。
そして、リクオ君の首に片腕を回し、小さな声でヒソヒソ何かをリクオ君の耳に囁く。
そのとたん、何故かリクオ君の顔が真っ赤になった。
「ちょっ、島君、そんなつもりで誘ったんじゃ……!」
2人は一体何、内緒話してんだろ?
首を傾げていると、島君はニヤついた顔でバンッとリクオ君の背中を叩く。
そして、島君は「わっ!」と前によろめくリクオ君を後目に、氷麗ちゃんの前に立つと緊張したような顔もちで口を開いた。
「お、お、及川さん! 奴良と有永さんは用事があるそうっすから、先に回りませんっすか!!」
「え!? えぇええ!?」
驚いた氷麗ちゃんは、リクオ君に詰め寄った。
「若……いえ、リクオ君! そんな事一言も聞いてません! 私も一緒に用事を…、え?」
島君は唐突に氷麗ちゃんの身体を脇に抱えると、どこかへ猛然と走り出した。
「え、えぇええええー!? 若ぁああああーーー!」
氷麗ちゃんの声がドップラー効果を残しながら、2人の姿は、あっと言う間に遠ざかって行った。
え!? 島君!? なんで氷麗ちゃん連れてどっかに行くのー?
唖然と見送っていると、「あの、舞香ちゃん」といつの間にか隣に佇んでいたリクオ君に声を掛けられた。
「ん?」
「あはは、2人がどっか行っちゃったから、一緒に回ろっか」
「て言うか、島君、思いっきり言動が怪しかったよ。なんで私達が用事があるなんて言ったんだろ?」
「あー、えっと、ボクも判らないなぁ……。ははは……。ほ、ほら、舞香ちゃんジェットコースターに乗りたかったんだよね。行こう!」
その言葉に島君への不信感は忘れ去られ、頭の中はジャットコースター一色に染まった。
「やった! 一番前がいい! 風が気持ちいいよね!」
「うん」
リクオ君は私に向かって柔らかく笑う。
その優し笑顔に、ふと先ほどのリクオ君の言葉を思い出した。
そう言えば、リクオ君、最初は大人しめの乗り物がいいって言ってたっけ?
でも、私に気を遣ってジェットコースターにしようとしてくれてる。
そう思うと何故か、胸がきゅっと痛んだ。
私はゆっくりと歩き出したリクオ君の背中に手を伸ばし、ぐっとTシャツを掴む。
「うわっ、どうしたの!? 舞香ちゃん!?」
驚いた顔で振り返るリクオ君に、私は口を開いた。
「えっと、フリーパス券、リクオ君のものだから、あの、リクオ君の好きな乗り物が先でいいよ?」
「え? ボクはそんな事気にしてないよ? 舞香ちゃん」
「うー、じゃあ、ジェットコースターの次はリクオ君の好きな乗り物!」
「うん!」
明るい笑顔で頷くリクオ君に、私も頬が緩み自然と笑顔になる。
と、私の笑った顔を見たリクオ君の顔が、見る間に赤くなった。
「どしたの!? リクオ君! 熱!?」
慌ててリクオ君の額に手を伸ばそうとしたら、リクオ君はブンブンッと大きく横に首を振る。
「な、なんでもないよっ! い、行こう! 舞香ちゃん!」
そう言うと、リクオ君は私の手を掴み、歩き出した。
ちょ、リクオ君!? て、て、手ー! なんで繋ぐのー!?
心臓が早鐘のように脈打ち、顔が熱くなる。
リクオくーんっ!