襖が袈裟懸けに斬られ、斜めに斬られた場所から音を立てて襖の上部が廊下へと落ちる。
それを見た夜リクオ君は小さく口角を上げると、私を肩に担ぎあげた。
視界が一瞬ぐるんと回る。

って、え?え?え?
なんで、俵担ぎされてるのー!?

「リクオ君、降ろして!私、関係ないってば!」

背中をばっしばっし叩くが、夜リクオ君は気にする事もなく、菅沼さんの部屋に近付いた。
と、突然前の部分で刀と刀がぶつかり合った音が響いた。
でも首を捻っても前は見えない。夜リクオ君の背中と後ろ髪しか見えない。

一体、何が!?

と思っていると、夜リクオ君が誰かに向かって口を開いた。

「オレは敵じゃねぇよ」

ん?確かこのセリフは……、邪魅が斬りかかって来た時に言ってたセリフだ。
と、言うことは……
原作を再び思い起こす。
確か、邪魅が札から生まれたものと戦っていた。
そのあと、夜リクオ君の登場となる。
ん?流れ通りに行ったって事で菅沼さん、怪我せずに済んでる?

安堵感に、ほー、と息を吐く。

良かったー。これで、ゆっくり眠れる……。
って、今、夜リクオ君に捕まってたんだったー!

「リクオ君、離して、離して!」

足をじたばたさせるが、私の腰を掴む腕の力は緩まなかった。
暴れる私の事なんてお構いなしに、夜リクオ君は話しをどんどんと進めて行く。

「詳しい事は道々話してやる……。この邪魅騒動のカラクリ、あばいてやるから……ついてきな」
「いや、その前におーろーしーてー!」

何故か俵担ぎされたまま、私も悪徳神主の居る秀島神社に行くことになった。


道々、夜リクオ君は菅沼さんの部屋に貼っていた札は自分の考えの立証的証拠だと言い、今から向かう神主が黒幕だと話す。
息を飲む様子の菅沼さん。
多分、まだ信じられないのだろう。

そりゃそうだよねー。菅沼さんの見知ってる神主は気の弱そうな感じの人だものね。
まあ、原作通り行けば、神主の正体が夜リクオ君の言ってる通りの人だと判るだろう。

……。はぁ……。
「お腹痛いよ。リクオ君」

肩の骨が当たって痛いのだ。男の人ってがっしりした骨だからなぁ……
私の呟きを耳にした夜リクオ君は口を開く。

「今離したら、逃げんだろ」
「当たり前っ!」
「じゃあ、着くまでこのままだ」

うううううっ……。なんで、強引なリクオ君が好きなのー!私ー!
はっ!?いや、違う違う!私の好きなのは、清継君!
リクオ君は氷麗ちゃんを好きになる流れだから、だめだめだめっ!
くーっ、なんでか胸がツキツキきつい…っ

私は胸の痛みを気の所為にして、離さない夜リクオ君の背中をぽすぽす連続して叩き、ささやかな意趣返しをした。








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