夜が更ける。眠気もマックスだ。
でも、事が終わるまで見張らないといけない。
目をこすりつつ、菅沼さんの部屋の襖をじーっと見ていると、突然、襖がドンドンッと大きく叩かれ始めた。

菅沼さんが、襲われてる!!!
確か原作では、ここで襖が切れるハズ!
……、ってあれ?何も起こらない?
夜リクオ君の姿もない。
ちょ、ちょっと、大丈夫かな?

思わず身を乗り出す。すると耳元で低く艶やかな声が聞こえて来た。

「こんな所で何してんだい?舞香」
「わっ!?」

思わずビクッと身体を揺らし、飛び上がる。

うわ、うわ、今、心臓が口から飛び出そうだったよ!
まだドキンドキンしている。

「ちょっ……」

文句を言おうと横を振り向くと、思ってもみないほどの至近距離に夜リクオ君の顔があった。
ドキンッと先ほどより強く心臓が飛び跳ねる。

「ちょい、近っ、近っ!」

何故か顔に熱が籠る。
思わず身体を後ろに反らすと何故かクッと面白そうに笑われた。

「こんな時でも面白れぇな。舞香は。オレが出て来るのを待ってたのかい?」
「いや、違うっ」

顔の赤みを消すようにぺちぺち頬を叩きながらも、私はどきぱっと答えた。

「つれねぇな」

しかし、夜リクオ君は口角を持ち上げ楽しそうな表情をしている。
なにか遊ばれてるようで、私は眉間に皺を寄せた。

「うー、リクオ君。菅沼さんの為に来たんでしょ?早く、行って!」

私は菅沼さんの部屋を指さす。
が、夜リクオ君はちらりとそちらを見、あろう事か私を後ろから抱き込んだ。

「まだ時じゃねぇか……」

呟きながら私の肩口に顎を乗せる。

なんで、こんな状態になってんのー!?

「離して!こういうことは、好きな人としてー!」

と、夜リクオ君の腕の中でもがく中、自分の発した言葉にツクンと胸が痛んだ。

「面白い舞香は好きだぜ?」
「は?」

思わず頭の中が真っ白になる。
と同時に菅沼さんの部屋の入口の襖が、大きな音と共に真ん中から袈裟懸けに斬られた。








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