思い思いに座った皆は、真面目に教科書を広げて勉強……は、しなかった。
清継君はノートパソコンを取り出し一心不乱に何かを打ち込んでるし、島君は清継君のノートパソコンを横から覗き込んでいる。
そして、巻さんと鳥居さんは楽しげにお喋りを始めていた。
真面目に勉強を始めているのは、私とカナちゃんとリクオ君だけだ。
半分以上勉強会になってない。

いいのかな?
…………。
いーよね。うん。本人達に勉強する意思がないんだし。
とっ、人の心配より、自分の事、自分の事!

私は数学の問題集を取り出すと、シャープペンを握り締めた。

『次の式を文字式の表し方にしたがって書きなさい』
7+Y÷3?

「……………」

最初7を3で割った方がいーのかな?
それとも、7と3を足して、Yで割る?

「う―――――ん」

わからないっ!

グルグルしだした頭を抱えていると、真向かいに座っているリクオ君から声を掛けられた。

「舞香ちゃん、ボクが判らないとこ教えてあげるよ。どの問題が判らないの?」
「えーっと……これ……」
「あ、これはね」

リクオ君は懇切丁寧に判り易く教えてくれた。

「あ、そっか! ありがとう、リクオ君!」

感謝の気持ちを込めてリクオ君を見ると、何故かリクオ君の頬が薄らと赤く染まった。
ん? と首を傾げていると、私の右横に座っていたカナちゃんが口を開いた。

「流石リクオ君。でも私だって期末は負けないから!」

可愛らしく宣言するカナちゃん。それに反応したのは、リクオ君の横に座っていた氷麗ちゃんだった。

「あら、リクオ様…いえ、リクオ君が家長に負けるはずがないじゃない。寝言は帰って言いなさいよ」
「あら?あなた自身はどうなのかしら?」
「ホホホ。出来ないわけないじゃない」
「フフフ…」
「ちょ、カナちゃんも氷麗もやめなよ」
「「リクオ君(様)は黙ってて(下さい)!」」

なんだか反りが合わなさそうな2人なのに、息ピッタリだ。
2人の言葉に「はい…」と首を竦めて引き下がるリクオ君。

うん。君子危うきに近寄らず、だよ、リクオ君。

私は睨みあう2人を放っておいて、次の問題に取りかかった。
と、突然巻さんと鳥居さん2人の感嘆の声が上がった。

「うわっ、美っ人!」
「キレー!!!」

ん?

顔を上げると、リビングの入り口に8人分のジュースとお菓子を乗せたトレーを持つお母さんが立っていた。
そして、鮮やかに紅いお母さんの唇が微かに動いた。

「ぬらの坊主が来るなんぞ聞いておらぬぞえ……」

んん?








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