カナちゃんと一緒に椅子に座って妖怪談義を聞いていると、リクオ君が突然話しかけて来た。
「あのさ、舞香ちゃん」
「ひゃいっ!?」
突然だったので、心臓が飛び出そうな程の驚きに襲われ、どもってしまった。
リクオ君は、ツボったのか、小さく吹き出す。
恥ずかしいっ!
でも、わ、笑わなくても……っ
胸の内で小さく抗議するが、リクオ君は構わず言葉を続けた。
「今日は陰陽術の稽古しないんだ?」
「あ、うん。ゆらちゃん、部活に顔出してないから」
「そっか。今日も休みなんだ・・・」
「うん。あの日、お父さんが送ってった、って言ってたんだけど…」
「ふうん。舞香ちゃんのお父さんって優しそうだよね」
「あ、うん。すごく優しいよ! 怒った所見た事ない」
「そうなんだ。ボク、父さんが居ないから少し羨ましいな…」
「え、あ……、ごめっ」
その言葉に原作を思い出した。
そう言えば、リクオ君のお父さんは羽衣狐に殺されていた。
もしかしたら、現実のリクオ君のお父さんも原作と同じく、殺されているのかもしれない。
と、リクオ君は笑いながら片手を小さく振った。
「謝る事ないよ。そうだ、今度また、うちに遊びに来てよ! じいちゃんもまた舞香ちゃんの父さんと話したいって言ってるし」
なんでぬらりひょんさんがうちのお父さんと話したいんだろ?
と思う前に、遊びに誘われ、嬉しさでいっぱいになってしまった。
ううっ、現金!
と、清継君が私達の前に顔をぬっと出して来た。
「君達」
「「わっ!?」」
リクオ君と2人で一緒に驚き、後ろにのけぞる。
清継君は、驚く私達の様子に構わず、ハイテンションな声音で言葉を続けた。
「奴良君のうちで勉強会だって!? いいねぇ! それじゃあ、今度の日曜日に決定だ!」
いや、勉強会だなんて、一言も言ってないっ、言ってない!
横に頭を振っていると、横でリクオ君は抗議の声を上げた。
「ちょっと、待ってよ! そんな急に無理だよ!」
そんなリクオ君に清継君は「決定事項だよ。奴良君」と言い放つ。
リクオ君はその場に座り込み、頭を抱え込んだ。
「あー、また皆に隠れて貰わなきゃ〜……。鴆君、隠れてくれるかなー」
……リクオ君。
その困り切った声に、思わず私は清継君に提案していた。
「清継君! うちはどうかなっ!?」
その言葉に皆の注目が私一人に集まる。
「有永さんの家かい?」
清継君は顎に手を当て考え込んだ。
「そう言えば、有永さんは○○町付近に住んでるんだったね。あの辺の妖怪は……ぶつぶつ」
何言ってるんだろう? 最後の方が聞き取れない。
固唾を飲みながら清継君の決断を待っていると、ふいに、清継君はポンッと手の平を叩いた。
「よしっ!決まりだ!今度の日曜日は有永さん家で勉強会だよ!」
その言葉にほっとする。
するとリクオ君が困惑したような顔で聞いて来た。
「舞香ちゃん。家の人に聞かずに決めちゃって大丈夫?」
「え?」
…………。
ああっ!? 大変な事提案しちゃった!?
お母さんに怒られるー!?