双子と判り、お腹の中に一緒にいたのだと思うと、親近感がすごく増す。
私はそのままそっと肩に頭を埋めたお兄さんを見た。
と、少し苦しそうな表情をした天也お兄さんは顔をあげ、切れ切れな息をしながら口を開いた。
「ここには母さんは居ないよ・・・。父さんの所に帰った方が良いのに、なぜ、頷かないの?」
「え・・・」
そう言われれば、普通中学生は一人暮らしなんか滅多にしない。
お父さんが居れば、尚更そちらに引き取られるのが普通だろう。
でも、でも・・・ここにはリクオ君が、居る。
大好きなリクオ君が居る。
支えてくれるリクオ君の体温を感じると胸が暖かくなる。
私は、見知らぬ父よりもリクオ君を改めて選ぶと、また首を小さく振った。
「ううん。私、この街を離れたくない、です。だから・・・ごめんなさい」
リクオ君の存在を背中に感じながら、はっきりと自分の意志を伝えた。
もしかしたら、寂しくなって後悔するかもしれない。
さっきみたいに遠くに居るお父さんに会いたくなるかもしれない。
でも、リクオ君が居るなら、頑張れる。
そう思い後ろを振り返ると、リクオ君は優しく微笑んでくれていた。
なので、私もゆっくりと微笑む。
それを見ていた天也お兄さんは苦虫を噛み潰したような顔になると、リクオ君を強く睨みながら口を開いた。
「なら、僕もここに住むから」
は、い?
私はリクオ君と一緒に目をパチクリさせた。
「じゃあ、オイラーも一緒に住んでやるぜー!」
「ばーか。お前は黙ってろ」
「だな・・・」
リクオ君とお兄さんに足蹴にされ気絶していた雨造さんが、いつから聞いていたのか、嬉しそうに手を上げて口を挟むが、今度は淡島さんから肘鉄を食らい、再び撃沈した。
だが、お兄さんが一緒に住んでくれるという言葉に私は驚き過ぎて、その出来ごとはただ目の前で繰り広げられる劇のようで、何の感慨も沸かなかった。
しかし、お兄さんは何らかの理由で土日しかこの街に滞在出来ないので、平日の間だけハウスキーパーさんを雇ってくれた。
そして、夏休みが残っている間、追い出されたリクオ君と遠野の皆が連日訪ねて来てくれたのだが、お兄さんは即追い返してしまった。
なので、リクオ君とまともに口も聞けずに数日が経った。
その数日の間に首が千切れそうな痛みに襲われる夢を見る。
首から何かが、這い出て来る夢だった。
そして、夏休みの最終日、どこかで見たような縦長頭のお爺さんがやって来た。
「ひぇっひぇっひぇっ・・・天華の父じゃ。久しぶりじゃのう。天也に響華」
その言葉を聞いたとたん、小さな頃、お菓子を買って貰った事を思い出す。
あ・・・どこかで見たことがあったのは、その所為?
そして、住んでいた村を他の妖怪から襲われ命さながら逃げて来たというお爺さんとも一緒に住む事になった。
それから、数週間に一回ずつ晴明が出て来る夢を見るようになる。
これって、どういう意味があるのだろう?
首を傾げる私の後ろで、ニタリと嫌な笑みを見せるお爺さんに私は気が付かなかった。