「よー、響華! リクオ居るかーって、げっ!? 何してやがんだ! リクオぉおーっ!」
「ギャバーッオイラーの響華ちゃんーっっ」
「あら? お邪魔だったかしら?」
「っ!?」

リクオ君に覆い被されていた私は、複数の声に羞恥心が一気に襲いかかり身体が固まった。


リクオ君は私の肌蹴た胸を隠すようにそのまま前から抱き締めてくれると、上半身を起こし、ベランダの方から現れた5人を半眼で睨んだ。
姿を現したのは、京都で別れたはずの遠野妖怪さん達だった。
淡島さん。イタクさん。冷羅さん。紫さん。雨造さんだ。
冷羅さんはまだ傷が癒えて無いようで、顔や喉に包帯を巻いていた。

「てめーら、邪魔すんじゃねぇよ。なんでここに居るんだ?」

眉を顰め怒りを含んだリクオ君の言葉を聞いた淡島さんは、こちらにずかずかずかと近付いて来る。
そして、ぐいっとリクオ君の襟首を掴んだ。

「てめぇばっかずりーぞ!リクオ。オレにも響華を触らせろ!」

は、い?
頭の中が呆けてて、淡島さんが言った意味がさっぱり判らない。
リクオ君は嫌そうな顔で淡島さんを睨む。

「なんでお前ぇに響華を触れさせねぇといけねぇんだ」
「いーじゃねぇか。減るもんじゃねーし。それに今オレ女だぜ? 女が女触ってどこが悪いんだよ!」
「お前ぇ男だろ・・・。どこもかしこも悪ーいじゃねぇか」

そう言うと共にリクオ君は器用に片足で淡島さんを蹴り飛ばす。
だが、淡島さんは紙一重でかわすと「へっ」と笑い、私の方を向いて口を開いた。

「響華。オレにしろよ。リクオよか上手いぜー?」

何が上手いんだろう?
でも、それよりも早く服をちゃんと着たいです!
ううっ・・・乱れた服ってなんだか恥ずかしい・・・っ

心の中で羞恥に耐えているとリクオ君は私を離し、シャツを脱ぐと私の胸元に掛け淡島さんに向き直る。

そして2人は喧嘩をし始めた。


ううっ・・・前のボタンを止めたくても周りで見物している遠野の妖怪さん達の目がいつこちらを向くか判らないから、止めれない。
その前にブラもずれてるし・・・
リクオ君に触れられるの嫌じゃないけど、他の人に見られるの恥ずかしいっ

羞恥に顔を真っ赤にしながら、リクオ君に借りたシャツを両腕で抱くように胸を隠していると、肩に何かバサッと掛けられる。

「・・・着てろ」

声のした方を見上げると、何故か頬を少し赤くし、鼻を押さえながらそっぽを向いてるイタクさんが居た。
いつも上に羽織っている上着が無い。

多分、その着物を渡してくれた?

「あ、りがとう、ございます」
「気にするな。早く着ろ・・・」

え? え? ま、待って! ここで着るのー!?
これ着る段階で、胸が見えてしまう可能性大だし・・・

どうしよう、と悩んでるとそっと冷羅さんから肩に手を置かれた。

「隣に部屋があるじゃない。着替えていらっしゃいな。男共は私と紫が見張ってるから」
「任せて、響華!」

にこっと笑う冷羅さんと自分の胸を叩く紫さんに、感謝を込めて頷く。
自分の部屋だったら、周りの目を気にせずきちんと服を着れる。
ほっとしつつ立ち上がりかけると、突然腰をぐいっと引かれた。
吃驚して横を見るとそれは淡島さんだった。

「淡島さん?」
「へっ、オレ達は、一緒に風呂入った仲なんだぜ!」
「はい?」

どういう経過なのか判らないが淡島さんは私の腰に手を回したまま、自慢げにリクオ君を見た。

あ、れ? 私男の人とお風呂入るような恥ずかしい事した?

私は眉を顰めながら記憶を探る。
今まで淡島さんとお風呂入るとすれば遠野に居た時か屋形船に居た時だ。
うーん? と記憶を探っているとはたと遠野での事を思い出した。

そう言えば、一人でお風呂に入ってる時、淡島さんに似た女の人が入って来て妖怪化した私の身体ジロジロ見ると、握りこぶし作って「おっしっ! 勝った!」とか言ってた覚えがあるけど・・・
今思うともしかして、あれって淡島、さん・・・・!?
淡島さんに裸見られてたーっっ!?

今更ながらに自分の身体を男の人に見られてたかと思うと思い切り恥ずかしくなった。

で、でも、なんで、淡島さん私が入ってるって知ってたのに、お風呂に入って来たんだろう?

顔を真っ赤にしつつ、ふと湧き出た疑問に首を傾げると黙りこくったリクオ君から不穏な空気が流れて来た。

・・・ん? リクオ君??

「それじゃあ何かい? オレより先に響華の胸やオレの知らねートコまで全部見たってーのかい?」
「その通り! オレの勝ちだな! リクオ!」
「・・・・・・殺す」

リクオ君は手に持った短刀をスラリと抜いた。

あ、れ? リクオ君、その短刀どこから出したの!?
確か、さっきまで丸腰だったよね?

「響華から離れろ・・・淡島」
「いやだね。リクオこそオレの”鬼憑(ひょうい)”食らってみるかぁー?」
「たたっ斬る…」

不穏な空気の中、私は淡島さんの言葉を聞き、吃驚した。

確か”鬼憑”って”畏”の応用系のものだったよね?

そう考えてふと遠野で見た激しい練習試合を思い出す。

・・・・・・・・
アパートが壊れる!?!?


リクオ君、淡島さん、待ってーっっ!!







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