いつもは一人で駅前のマンションへと帰宅しているのだが、今日は珍しくカナちゃんと並んで帰ってます。

うん。カナちゃん。流石、学年五指に入るほど可愛い。

横目でカナちゃんをちらちらと見ながら、そう考えていると私の視線に気付いたカナちゃんは、ん? と首を傾げた。

「綺羅ちゃん。私の顔に何かついてる?」
「ううん。いや、カナちゃん可愛いなーって思ってただけ」

そう言うとカナちゃんは頬を赤らめ、片方の頬に手を添え恥ずかしそうに口を開いた。

「そ、そんな事ないよ! 綺羅ちゃんの方こそ可愛いじゃない!」
「へ? どこが?」

真顔で問い返すと「目が大きくて可愛いよ!」と言われる。

ふむ。病院で初めてこの顔を見た時、確かに将来有望そうだ、と思ったが、本来の自分の顔では無いので何も感じない。
まあ、本来の顔でもお世辞だと思い、流してしまうが。

「ま、それはあっちにポイッと置いといて……」
「え? 置くの…?」

カナちゃんのツッコミに構わず、私は言葉を続けた。

「カナちゃんってどんな男性……って言うか、男の子が好きなの?」
「えっ!?」
「是非、知りたいなぁ」

うん。原作でカナちゃんは夜リクオ君が好きだ、という事は判っているが、やはり確認みたいな意味でカナちゃんの口からそれを聞いてみたい。

「わ、私の好みは、……べ、別にいーでしょ! 綺羅ちゃんこそ、どんな子が好みなの?」

あはは。反撃されました。

私は頬をポリと掻くと、改めて自分が好みだと思う理想の男性像を思い浮かべる。
だが、仕事ばかりしていた私は、特に好ましいと思われる男性像が浮かんで来ない。

「うーん……うーん……」

思い悩んでいると、カナちゃんが助け舟的な言葉を口にした。

「ほら。優しい人とか、カッコ良い人がいいとか…」
「優しい人かぁ…。うーん。あまり優しすぎるのも嫌だなぁ……(八方美人は嫌いだし…)………うん! 好きになった人が好みって事で!」
「それ、答えじゃないよ!」
「いんや、真面目な答え!」

一本指を立ててキリッとした顔で答えると、その真面目な顔が余程面白かったのか、カナちゃんはプッと笑い出した。

「もー、綺羅ちゃん、おかしーっ」

そんな風に私達は笑い話をしながら帰っていたのだが、後ろの方でリクオ君と氷麗ちゃんが連れ立って帰って居た事に気がつかなかった。


「そっか……優しい人嫌いなんだ……」
「若! 私は大好きです!」
「へ? 氷麗?」








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