4月○日曇り3限目の休み時間。

カナちゃんや他の女の子の話しを聞いていると、ふいに教室の引き戸が開いた音がした。
話していたカナちゃんが、教室のドアが横に開けられた事に気付き入口の方を見る。
すると驚いたような表情になり幼馴染であるリクオ君の名前を小さく呟いた。

「ん?」

普通の人の名前では振り向かないが、この世界で目覚めてから注目していた人物の名前を呟かれ、思わず振り向く。
と、そこには大荷物が歩いていた。
次は社会の授業なのだが、腕に持つ大きな地図やたくさんの資料に頭が隠されていた。

「うわ…、よく前見えるなぁ……」

これは、ちょっと手伝ってやらねば。

お節介焼きの性分がうずうずと疼き、私は「ちょっとごめん」と言い立ち上がった。
周りの女の子達は「行ってらっしゃーい」と手を振り、また先程の話しで盛り上がりだす。
多分トイレかと思ったのだろう。
カナちゃんもしばらくリクオ君の方を気にするように見ていたが、女の子に話しかけられ会話に加わって行った。

うん。まあ、普通こんなもん。
学生時代は積極的な人じゃない限り、同級生がいくら重そうな荷物を抱えていても、積極的に手伝ったりしない。ただ単なるクラスメイトなだけでは、尚更だ。
まあ、相手が親しい友達なら、手伝うだろう。

……って、この考え方で行くとリクオ君、クラスに親しい友達が居ない事になるような気が?
いや、クラスの男の子はギャーギャー騒ぐ事に夢中になってるだけで気付かないだろうか?

「……ま、深く考えてもしょーがないね。リクオ君。手伝うよ」

近付いて声をかけると腕に抱えた大きな荷物の向こうからリクオ君の返答が返って来た。

「あれ? その声って九曜さん? アハハ…ありがとう! …っと、ふう…」

その荷物をドサリと教卓の傍に下ろす。
その音からかなりの重たさを感じた。
ふと原作を思い出す。

そう言えば何巻かにゴミを最高何トンか出したという話しが載ってたよーな気が?
何千回もゴミ出しに行くわけも無いので、多分何かとてつもなく重いゴミが出たんだな、と思ったけど、それをも手に持ってゴミに出したと言う事。

……リクオ君。見かけによらず、力持ち?
漫画に描かれてる夜リクオ君も筋肉が綺麗についてたし…

「リクオ君って隠れマッチョ?」
「え?」

吃驚した顔で振り向くリクオ君に、私は大きな地図を箱から取り出しつつ首を振る。
いやいや、今はマッチョの事を聞いてる時間は無い、無い。休み時間内に道具を黒板とかに設置しないといけないのだから。
だから私は笑って言葉を続けた。

「リクオ君。今度、服の下(の立派な腕の筋肉)見せてねー」
「うえ!?!?」
「?」

私の言葉に急に顔を赤くし、パクパクと口を動かすリクオ君。

あれ? 何か変な事言った?
学ランの下って大概シャツだから、腕の筋肉とか良く見えそうなんだけど…

「はい。さっさと片付けよー!」

私の言葉にハッとすると、リクオ君はテキパキと動き出す。
でも、まだ頬は赤いままだった。

うーん。何かやらしい事言ったっけ?
いや、夜リクオ君の見事な胸筋は鑑賞し甲斐がありそうだけどね!

私は作業をしながら、はて?と首を傾げた。







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