「えー、こうなるから主語は……」

退屈な英語の授業が今日もまた始まった。

(ひま。ひま。ひまー)

ノートにグリグリ落書き落書き。
まーる書いてちょん。まーる書いてちょん。おーまめに、と……
グリグリ描いた絵に満足し、隣のカナちゃんの肩をちょんちょんとする。

「(小声)どうしたの? 綺羅ちゃん?」
「(小声)見て見て。会心の出来!可愛いネコ描いたよー!」
「(小声)あ。ど○○もん。上手ー」
「これにこうして口紅つけてドレス着せて、花飾るとオカマドラ〜(←ど○○もんの声真似)」
「「ぷっ」」

ん?
カナちゃんと一緒に噴出したのって誰?

噴出した音のした方を見てみると右隣のリクオ君が教科書を立たせた裏で笑いを堪えて、ぷるぷる肩を震えさせていた。

こら。そこの青少年。男の子なら男の子らしく、もっと快活に笑いなさい!(←授業中なので無理です)

………

私はある事を考え付き手をぽむと打つと、リクオ君の傍に寄り、耳元に小声でささやく。

「ぼくオカマドラ〜、てへ、よろしく〜(ぼそ)」
「ぶはっ」

どこが笑いのツボに嵌ったのか良く判らないが、大きな声で噴出すリクオ君。
クラスの皆の視線が一斉に集まる。

「こらっ!そこの2人!何遊んどる!この英文訳してみろ!」
「わ、す、すいません」

リクオ君は慌てて立ち上がり、先生から指示された所をスラスラと訳す。

ふむ。ご愁傷様です。リクオ君。

なむなむ、と思っていると、「九曜、次の章をお前が訳すんだ」と先生からのたまわれた。

うん。九曜って私のほかに灯もいるよね。
あてられたのは、灯だ。灯。
うん。うん。

と、心の中で頷き、ノートに今度はオカマの○太を描こうとしたら、パコンと頭を殴られる。

「痛いです。先生」
「お前を当てたんだ。お前を!ほら訳してみろ!」
「えー、じゃあ、ちょっとだけ」
「バカもん。1章丸ごとだ」
「はい、はいっと。えーっと、昔々あるところに竹取の翁が……」

私が立ち上がり、読みだすとクラスの皆は首を傾げながら、教科書をペラペラと捲りだす。
そんな事お構いなしに読んでると、リクオ君から袖をひかれた。

「ん? どうしたの?」

リクオ君は苦笑しつつ口元に手を当て、こそっと囁く。

「九曜さん。それ、古典の教科書だよ」
「…………」

あ。
間違えた?

「どうりで訳し易いと思ったよ。うん。」

どっとクラスの皆の笑い声が響き渡る中、おどろおどろとした声が降ってくる。

「九曜〜〜〜。そんなに俺の愛の籠った宿題が欲しいのか。そーかそーか」

私はその言葉に即座に答える。

「あ。パスの方向で。」


もちろん、パス出来るわけが無く宿題が山と出された。
親切なリクオ君とカナちゃんを家に呼び、教えて貰った私だった。

うん。優しい友達を持って幸せです!

その中、こそっとカナちゃんに耳打ちされた。

「綺羅ちゃん。それで灯くんって何が好みなのかな、って・・あ、ただ普通に興味があるだけで特別な意味は無いよ!うんっ」

………あれ? カナちゃん??








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