こんにちは。綺羅です。

この頃リクオ君を見ていて真面目過ぎだと思うんだ。
まったく、そんなに真面目に捕えすぎてどーするの?

と、言うか13歳で成人ねー・・・

自分の中学校の頃の事を思い出す。
多分、大人と言われて重大な責任を負わされてもこなせないだろう。
と、言う事はリクオ君、それだけ急いで大人になったって事?
子供の時期が長くあってもいいのに。
そのうち嫌と言うほど大人の世界に染まらないといけなくなるのに。

と、言う事でぬらりひょんさんに意見をしに奴良家へ足を運んだ。
ししおどしが、カッコーンと鳴る中、広間に通されぬらりひょんさんと対面をする。

「ぬらりひょんさん。単刀直入に聞きますけどリクオ君が大人になって嬉しい?」
「そりゃ嬉しいに決まっとるじゃろ」
「じゃあ、ぬらりひょんさんは13歳の頃から総大将として皆を纏めあげてたの?」
「ワシは纏めてねぇ。皆が勝手について来たんじゃ」

なるほど。
でも、リクオ君はぬらりひょんさんのような所が無いから、真面目に頑張るしかないんだ。

「で。13歳で大人の行動取ってたの?」
「当り前じゃ。東西南北。可愛い女子(おなご)を何十人も泣かせてたのう。」
にっと笑うぬらりひょんさん。

エロぼけ小僧だったんですね。

「リクオ君に奴良家の妖怪を纏めあげて貰いたい?」
「当り前じゃ」
「なんで? だって、勝手について来た妖怪達なのに?」
「今は奴良組の一員。あいつらをまとめ上げてこそ一人前じゃな」
「変」
「何?」
「ぬらりひょんさんについて来た妖怪達ならぬらりひょんさんがそのまま従えとけばいいと思う。
ぬらりひょんさんの言う事を聞いてるとリクオ君に魅力を感じた妖怪を纏めるのがリクオ君のやる事じゃないかな?
・・・うーん。上手く言い表せないけど、端から見るとぬらりひょんさんは自分について来た妖怪達をリクオ君に押しつけてる感じ?」
「押しつけとらん」
「そのつもりが無くても、端から見ればそう感じるの。リクオ君はリクオ君らしくしてれば良いと思う。あんなに真面目に気を張らないでね」
「あいつは真面目じゃからのう。珱姫によう似とるわい」
「真面目な所が人間だから? でも、気を張り詰め過ぎると疲れるよ。どうすれば楽にしてやれるかな?と思う。 責任感バリバリって感じだし・・もうクソ真面目小僧だね!」
「褒めてぇのか?それとも貶してのか?」
「ん?どっちでも無い。ただ、真面目に頑張ってるリクオ君の頬っぺをぐいっと引っ張りたい!」
「お嬢ちゃん・・・リクオに惚れてんのかい?」
「は?うーん? 判らない! でも、気を抜いて欲しい!」

私はぬらりひょんさんに自分の意見を聞いて貰った。
これでも多分、リクオ君を取り巻く環境は変わらないと思うけど。



その日の夜、リクオの部屋に翼を4枚持った白鴉天狗が訪れる。

「馬鹿もの。天使だっ!」

失礼・・・変わり無いような気がするが、白鴉天狗改め薄い金髪に青い眼を持つ天使綺羅は、窓からリクオの部屋に侵入をした。
目を見開き声無く驚くリクオの前で、足を組み座ると上着のポケットからおもむろにトランプを取り出した。

「あれがああ言っていたのでこれだ」
「は?・・・」

綺羅は訳も分からず眉を寄せているリクオの反応など気に掛けず、目の前にトランプを配る。

「スピードだ。やった事は?」
「無ぇ」
「・・・私より堅物に会ったぞ。吃驚だ。学友とかとカードゲームはやらなかったのだろうか?」
「外で遊んでたに決まってるだろ・・・」
「なるほど。では、ルールを説明しよう」

一通りルールを説明するとリクオは頷く。

「で? 何か賭けるのかい?」
「真面目な私としては、賭け事はあまりやりたくは無いが、今日は別だ。私が勝てばお前の頬を伸ばせる所まで伸ばさせて貰う」
「はっ、面白ぇ。じゃあオレが勝てば何させて貰えるんだい?」
「そうだな・・・1回だけ戦闘を有利にしてやろう」
「は?」
「私の能力は本来人間をサポートするもの。戦闘時、敵に攻撃されてもお前の身体は空気と同化する」
「明鏡止水と同じじゃねぇか」
「違う。それは敵の認識をずらす『技』だろう? 私の『力』は人間の肉体そのものを空気と同質化させる。透明人間になるようなものだな。だから切られても傷は負わない。実際の戦闘にはすごく重宝するぞ?」
「へぇ・・・便利な能力だな。オレの下僕にならねぇか?」
「却下だ。では、交渉成立と言う事で行くぞ?」

綺羅は薄く笑うと合図を出した。



「・・・・・・・っっっ な、何故初心者に負けたーっ! 私ーーっ」

綺羅はドンドンと床を叩く。
リクオはそれを見ながら悠然と笑みを浮かべた。

「きっちり約束は守って貰うぜ? で、その力を使って欲しい時、どうすりゃいい?」

綺羅は溜息をつくと背中の翼から1枚の白い羽根を引き抜き、リクオに手渡す。

「これに向かって念じればいい。そうすれば一瞬で駆けつけ力を行使しよう・・・」
「へぇ・・これにねぇ?」

リクオは指で羽根を摘みくるくると回す。

「ああ。『力を』でも『力を貸せ』という思考でも良いぞ。その羽根は持ち主の思念を私に伝えるからな」
「判った・・・」
「最後に一言言っておこう」
「なんだ・・・?」
「気を張るのは良いことだと思う。だが、自分自身を見せないと誰もついて来ないぞ?」
「どういうこったい?」
「お前の祖父を少しは見習えと言う事だな。まあ、大変だと思うがお前を見守るのも面白そうだ。じゃあな・・・」

窓から翼を広げすっと出て行く綺羅を見ながら、リクオは考え込んだ。
どうやって白鴉天狗を下僕にしようかと。


「・・・だから、私は天使だっ!」

空を飛びながら、羽根から伝わる思念に突っ込む綺羅が居た。







- ナノ -