サラサラの茶色い髪の毛が薄紅色の頬にかかり、なんだか艶っぽい。
大きな目は閉じられているが、キリッと上がった眉を見てるとなんだか、ドキドキし出す。

って、あれ? なんで、リクオ君の顔がこんなに近い?

私は頭をハッキリさせる為に目をパチパチと瞬かせる。

あれ? なんで私、リクオ君の身体を抱き締めてんのー!?

「っっっ!」

私は慌てて起き上がると布団から抜け出した。

い、い、一緒に寝てましたー!?

十代の女の子じゃないけど、恥ずかしさに顔に熱が籠った。

いやいや、これは布団の暑さの所為。きっとそう!

そう思いつつ手でパタパタ扇ぐ。

まったく、なんでリクオ君と一緒に寝てるのよ。私!

不可解な出来事に眉を顰めながら、もう一度リクオ君を見る。
と、リクオ君の様子が少しおかしな事に気付いた。

「う゛〜ん……」

呻きながら眉を顰めている。

そう言えば、いつもより頬が赤い……?

そっとリクオ君に近付き、額に手を当ててみると吃驚するほどの熱を持っていた。

熱――っ!?
ちょっ、嘘!
寝てる時って普通平常より低いのが普通じゃない?
大変!

私は慌てて立ち上がり、障子を開け叫んだ。

「誰か来て下さい! リクオ君が熱出してます!」



数分後、たくさんの妖怪達が詰めかけて来た。
その異様な姿にまた目を瞠る。

妖怪って朝も活動するもんなの!?

この世界に突っ込みたくなった。
部屋の隅で妖怪達から目を逸らしながらも座っていると妙な会話が耳に飛び込んで来た。

「おいっ! なんで熱出してんだ!?」
「昨日夜遅かったから、風邪ひいたんじゃねぇか!?」
「おいおい、人間弱っちいなぁ」
「それより、風邪ってどうやりゃ治るんだ?」
「ふむ。ネギを首に巻けば効くと聞いたことあるぞ!」

こらこらこら。ネギを首に巻いてどうすんの!
妖怪の世界に風邪は存在しないのだろうか?

心の中で突っ込んでいると、なんだか自分に複数の視線が集まっているのを感じ取る。

え? 何? 誰かに見られてる?

チラリと視線がする方向を見ると、部屋に集まった妖怪達が私を見ていた。

「ひっ!!」

思わず悲鳴を上げてしまったが、妖怪達は気にした風でも無く私に話しかけて来た。

「なあなあ、人間が風邪ひいた時どうするんだ?」
「あんた、人間だろ? 教えてくれよ!」

怖い異形の風体でもリクオ君を心底心配している妖怪達の様子に、私は自分を叱咤した。
外見怖くても、奴良家の妖怪達は原作で描かれていた通り優しい妖怪なのだ。
私は妖怪達を見据えると、自分の知っている限りの熱を出した時の対処法。そしてお医者様に診せる事を教えた。



そして数時間後。お医者の鴆さんを見送った私は、首無さんに頼まれてリクオ君の傍に付き添っていた。
ちなみに鴆さんは、家が火事にあって今は奴良家に一時居候中だそうだ。
身体が弱く長くは起きていられないらしい。
うーん。大変な身体だなぁ、と思う。

と、リクオ君は、まだ熱が下がらないのか時折苦しそうに唸る。
風邪でなくて疲労から来る熱という事だったので良かったが、熱が40度あればすごいきついだろう。
私は宥めるようにそのサラサラの髪を撫ぜた。
私の手が冷たいのか、触れてると気持ち良さそうな寝息に変わる。

早く良くなるといいね。リクオ君。

そう思いつつ撫ぜていると廊下の向こうからドタドタと足音が近付いて来た。







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