「「「うわーーーっ!」」」
皆の感嘆の声がハモる。
はい。只今、清継君の自宅に清十字団全員がお邪魔しています。
メンバーを詳しく紹介すると、私にリクオ君に氷麗ちゃん。
そしてカナちゃんとゆらちゃん。あとは清継君を尊敬している島君だ。
合計6名で清継君の家へと訪問したわけだが、こんなに大人数押しかけても家の中は広くて豪華だった。
シャンデリアが眩しい……。
はー。お金、あるところにはあるもんだねー…
キョロキョロ見回しながら、先頭を行く清継君に皆と一緒についていくと、資料室らしい一室に通された。
壁には色々な掛け軸が掛けられ、棚にはいかにも古めかしい壷やお皿。そして日本刀などが並べられている。
部屋の中央には透明の展示ケースが置いてあり、粘土版や昔の巻物が安置されてあった。
!!! って、粘土版!?
私はそれに思わずかぶりつく。
実は古代の文明とか興味がある。
インターネットとかで、古代の粘土版にUFOらしきものが彫ってあったとかいう記事を見ると、ついついのめり込んでしまうのだ。
うん。古代の神秘!!
私はまじまじとその厚さ3cm程ある端の欠けた四角い粘土版を観察した。
「すっごい。本物ー」
そう呟くと左右からカナちゃんとリクオ君が覗いて来た。
「へぇ。九曜さん、こういうのに興味あるんだ…」
「綺羅ちゃん。見かけによらず渋いね……」
「いや、渋く無い。渋く無い。古代の粘土版って夢とロマンが溢れてるし!」
チッチッチッと指を揺らして、目を輝かしているとカナちゃんがまじまじと私の顔を見た。
「ふーん。そっかー。綺羅ちゃん、将来、考古学者目指してるの?」
「いや。普通のOL」
私はスパンッと現実的な事をのたまった。
うん。小さい頃、その職業憧れてたけど現実は厳しい。
「「……」」
だが、2人は何故か私の答えに目を点にする。
あれ? 私、なんか変な事言ったっけ?
と、ふいに少し離れた場所から清継君の声が上がる。
「諸君! これが怪奇蒐集マニアの友人から買い付けた「呪いの人形」と「日記」だ!」
呪い……呪いの人形……
いーやーっ!
思わず背筋がゾクゾクとして来る。
原作では確か襲いかかってくるんだよね!? グワーッて!!
私は被害を被らないよう、一歩一歩後ろに下がった。
「あれ? 綺羅ちゃんなんでそんなに後ろに下がるの? もしもの時の為に皆と一緒の方が安全だよ」
皆からすごく離れたドアの傍に移動しようとしていた私の手をカナちゃんが引っ張った。
「い、いや、私、遠くから見守ってたいなー、とか…」
顔の前で手をブンブンと横に振るが、カナちゃんは首を傾げる。
うん。意味が通じません。
まあ、本当かどうか判らないものを遠くから見守るっていうのも変かも、だけど……
私はカナちゃんに引き連れられ皆の輪に加わった。
2m先の棚の上には、古びた市松人形が立っている。
あれが、あれが、グワーッと……
そう考えると手に汗が出始め、心臓がバクバクと早くなって行っているのが判る。
「どうしたの!? 九曜さん。冷や汗掻いてるよ?」
「あー、なんでもない。なんでもない」
横からリクオ君が声を掛けて来たが、これから起こることを言うわけにもいかず、首をふるふると振った。
「具合が悪いなら清継君に言って・・「それ!」へ?」
ナイスアイデア! リクオ君!!
「私、すっごく気分が悪いから、部屋の外に居ていいかな?」
「うん。無理しない方がいいよ。清継君!」
心底心配してくれているリクオ君の様子に良心がチクチクと痛む。
清継君に私が具合悪い事を伝えているリクオ君に、心の中で「ごめんっ!」と謝っているとカナちゃんが顔を覗き込んで来た。
「ホント。顔色がちょっと悪いわね。一緒に付いててあげようか?」
その言葉に、カナちゃんも怖いものが苦手だった事を思い出す。
原作では、呪いの人形編で怖い思いをしただろう。
カナちゃんに今回は怖い思いをさせたくなくて私は頷いた。
と、リクオ君と一緒に清継君がやって来る。
そして顎に手を当てると尊大に口を開いた。
「気分が悪いなら仕方ないね。実証したらレポートを作って見せてあげよう。ハッハッハッ」
「いりません」
あ。なんて、正直な私の口。
しまった、と思っていると清継君が目を丸くして叫び声を上げる。
「な、なんだってぇえーっ! こんな貴重な体験滅多に出来ないんだぞー!」
「ア、ハハハ。清継君。まあまあ。」
リクオ君が清継君と私の間に入って、苦笑しながら清継君を宥める。
と、人形のすぐ傍で日記を手に取った島君が、驚愕の行動を取った。
「なんで日記もあるんっすかね? なになに、2月22日引越しまであと7日……」
島君が読み始めるといつの間にか皆シンと押し黙る。
その中、淀み無く読む島君の声が響く。
あ、れ? この場面って島君が読んでたっけ?
うーん。ちょっと思い出せないけど、確か、原作ではこの朗読の途中で人形が変に…
そう思いつつチラリと市松人形を見るが、何も変化は無い。
ホウッ、と息を付き、もしかしたら旧校舎の時みたいに妖怪は現れないかもしれない、と考える。
「…………雨が降っていたが、思い切って捨てた…」
うん。変化無い。変化無……
って、か、顔が歪んで来てる!?
いーやーっ
私は思わず目の前に立っていた手近なリクオ君の身体に、ひしっと抱きつき目を瞑った。
「うえっ!? 九曜さん!?」
「か、顔ーーっ!」
「「「え?」」」
皆は私が指指した方向をバッと見た。