駅でリクオ君と合流すると私達はまずは映画館に向かった。
チケットはリクオ君が知り合いに貰ったものだったりする。
映画館に向かいながらも、やっぱりカナちゃんとも来たかったな、と思う。
用事なら仕方無いけど、今度は空いてる日に一緒に、と誘ってみよう。
そう決心した私に向かってリクオ君は口を開いた。

「この映画すごく感動するそうだよ。響華ちゃん」
「そうなんだ。どんな映画のチケットを貰ったの?」
「『○○物語』って言う題名だよ」
「『○○物語』??」

その題名を聞いてもすぐに話しの内容が浮かんで来ない。
どんな風に感動するんだろう?

そう思っているとリクオ君は言葉を続けた。

「化け猫屋の女の子のおススメ映画でさ……とっ、あはは。何でもない、何でもない!」

何か言いかけたリクオ君は、途中で誤魔化すように後ろ頭を掻きながら乾いた笑い声を零した。

ん? 化け猫屋ってどこだろ?
どこかで聞いた事あったんだけど、どこでだっけ?
化け猫、化け猫……うーん?

私は不自然に笑うリクオ君を見ながらも心の中で傾げた。
でも、思い出せない。
いつか思い出せるかな?

そう思いながらも「そうなんだ」と相槌を打った。
するとリクオ君はホッと息を付きながら小声で「良かったぁ…。誤解されるところだった」と呟く。
その言葉がしっかり聞こえ、頭の中にクエスチョンマークが発生する。

誤解ってなんの事だろ?
はて?
今日のリクオ君は、良く判らない。

そう思いつつも学校での事とかを話しながら、足を進めた。



映画館につくと2人でドリンクを買い、席につく。
映画の内容は、南極に置き去りにされた犬達の生き様を描いたものだった。

ううっ、置き去りにされた犬達がすごく可哀想!
でも、再会出来て良かった!!

最後の方になると感動で涙がポロポロと流れ出る。
と、自分が涙を流している事に気付き、急に恥ずかしくなり慌てて顔を左横に向けた。
右隣に座っているリクオ君に泣いてる事がバレてしまう事がすごく恥ずかしかったからだ。
私は目を擦りつつバックの中からハンカチを取り出そうとした。
すると突然目を擦っている方の腕を大きな手で掴まれ、耳元で囁かれる。

「そんなに目ぇ擦ると真っ赤になっちまうぜ…?」

この声…、鯉伴さん!?

目を丸く見開くと頬に生暖かい感触がした。

「わっ!?」

思わず頬を手で押さえる。

何? 何?

目を瞬いていると右隣に座っていたリクオ君が私の異変に気付き声をかけて来た。

「響華ちゃん。どうしたの?」
「え? あ……りは……もごっ」

鯉伴さんが居るの、と正直に答えようとすると大きな手で口を塞がれた。
だが、スクリーンの光で私の口元を覆う手に気付いたリクオ君は私の横を見る。

「って、父さんっ!?」

リクオ君は大声を上げ立ち上がった。
鯉伴さんはその声を聞くと私の口から手を離し、見つかっちまったや、と呟きポリポリとコメカミを掻いた。
その中周りから「シーッ」「座ってよ!」「邪魔!」とか文句が上がって来る。
慌てて周りを見回すリクオ君。

うん。吃驚するの良く判るよ。リクオ君。
私も吃驚しました。

心の中でうんうんと頷いていると、リクオ君は周りに「邪魔しちゃってごめんなさい」と謝り、自分の席に座った。
そして半眼で鯉伴さんを睨む。

「どうして父さんがここに居るのさ」
「そりゃあ、心配だったからに決まってんだろ?」
「過保護すぎだよっ! ボクはもう子供じゃないんだからね!」
「「「しーっ!!」」」
「あ。」

また周りの人に注意され、リクオ君は眉を顰め鯉伴さんを見ながら押し黙った。
私も左隣で腕を組んでこちらを見ている鯉伴さんに視線をやりながら、苦笑する。

……鯉伴さん、多分リクオ君が言うように過保護だと思います。







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