私は15歳で病死してしまったのだけど、意識を取り戻すと転生して赤ん坊になっていました。
お酒好きの漢前のお母さんと平和に暮らしていたのだけど、2歳の時、『ぬらりひょんの孫』に出て来る鯉伴さんとリクオ君に出会い、信じられないけれども『ぬら孫』の世界に転生してしまった事を悟りました。
鯉伴さんはお母さんの酒飲み友達だったらしく、度々リクオ君を伴って我が家を訪れ、いつの間にかリクオ君の幼馴染となってしまいました。

うーん。幼馴染の役はカナちゃんだったのに、どうしてだろう?

首を傾げたのだけど、特に大きな問題は無かったので、あまり気にせず生活している私です。
幼稚園に入園すると、あの学校で5本の指に入る美少女カナちゃんとも出会い、お友達になりました。
カナちゃん。目がとても大きくて可愛いです。
そして、びっくり。
アパートの隣のお店屋さんが、カナちゃんのお家だと判明しました。
それが判明してからは、いつも一緒に登下校している私達です。

うん。本当にカナちゃん、可愛い!

そして、幼稚園に入園して間もない日にそれは突然起こりました。
そう、鯉伴さんの誕生日が間近に迫ってたある日の土曜日の事。


いつも通りに我が家へ遊びに来た2人に、帰り際、額にちゅうを貰ってます。

……もう、慣れました。

うん。
ちゅうをされ始めたきっかけ、忘れちゃったけど、され始めてもう随分立つ。

遠い目をしていた私に鯉伴さんは、さりげに爆弾発言を落としてくれた。

「今度は響華ちゃんから、ちゅうしてくんねぇかい?」

は?

私は目が点になる。

えっと、えっと、えっと……ひ、額だよね? 額!
で、でも、何か恥ずかしいです! 鯉伴さんっ!

恥ずかしさに視線をうろちょろさせてると、しゃがんだままの鯉伴さんから頭にぽんと手を置かれた。

「何も口にしろってんじゃねぇんだぜ? そりゃ、後のお楽しみにとっとかなきゃいけねーしな」

…………鯉伴さん。鯉伴さん。後のお楽しみって何ですか!?!?

鯉伴さんの顔を見ると、私と同じ高さに目線を合わせたその顔がにっと笑う。

はー……

私は心の中で溜息をつくと、覚悟を決め、目をぎゅっと閉じ、鯉伴さんに顔を近付けた。

むにゅっと自分の唇に柔らかい感触が伝わる。

ほ、ほ、ほっぺかな?

うっすらと目を開けると鯉伴さんのアップの顔が目いっぱい広がっていた。

ほっぺかと思ったら、鯉伴さんの唇に自分の唇をくっつけていた。

唇っっ!?

恥ずかしさMAXで思い切り頬が熱く真っ赤になる。
慌てて顔を引こうとしたら、後ろ頭をいつの間にか掴まれ、顔を引ききれなかった。

ちょ、ちょ、ちょ、鯉伴さんっ!?

そしてしばらくすると、唇をペロリと舐められ離された。

もう、私の顔はユデダコさんだ。

「ごっそうさん……響華ちゃんも大胆になったもんだ」

悪びれず、ニヤリと笑って妙な事をのたまう鯉伴さん。
私はその言葉に真っ赤になりつつ、全力で首を振った。

いやいやいや、間違いです! 鯉伴さん、さっきのリセットさせて下さいー!

私は頓珍漢な事を心の中で叫んだ。
その中、鯉伴さんの後ろにいたリクオ君が顔を出す。

「あ、お父さんだけずるいっ! ボクもー!」

私の方に駆け寄りそうになるリクオ君。
でも、鯉伴さんはその襟首をひっつかむと、「じゃあな、響華ちゃん、邪魔したや……」と言い帰って行く。

あれ? 前は、リクオ君が鯉伴さんの真似しようとすると笑いながら、それを見てたのに?
どうしたんだろう?

以前とちょっと違う鯉伴さんに首を傾げているとふいに脳裏に鯉伴さんが、後ろから黒いワンピースを着た少女に刺される場面がよぎった。
日本刀が鯉伴さんの背中から前に貫通する。
目を見開き驚いた様子で黒髪の少女を見つめる鯉伴さん。

…………?
って、え? え?
この場面って、何?

不思議に思う中、不安が徐々に心の中へ広がった。

……っ

その悪い予感にいてもたってもいられなくなり、私は閉じようとしていたアパートのドアをもう一度開いた。
まだそんなに進んでなかったみたいで、鯉伴さん達は丁度アパートの階段を下りている所だった。
私は大声で呼び止めようと口を開きかけた。
と、誰かの手が私の口を塞ぐ。

「ん、んんーっ?」

誰!?







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