腕の中の響華に小さく震える声で囁かれる。

「……、……お願い。何でもするから…、まとって……」

守りてぇ女。
それ以上に全部オレのもんにしてぇ女。
響華のその言葉にドクッ、と心臓が強く打つ。

「っ!?」

なんでそんな事言うんだ。
「何でもする」と言う言葉が頭の中で繰り返される。

「響華……意味判ってんのかい?」

響華は真剣な目で頷いた。

仕方ねぇ。今回だけだ。

オレは響華の頬にキスをすると囁く。

「仕方ねぇ…今回だけだ。響華、何でもするってぇ言葉、忘れるんじゃねぇぜ?」

最後にそう言うと響華はオレに抱きついてきた。
初めてだ。響華の方からオレに抱きついてきたのは…。
凄まじい歓喜に襲われ、響華にオレは響華に唇を重ねる。
そして、しばらく見つめ合うと響華の頬に手を添えオレは響華に自分の意思を伝えた。

「響華…。オレにお前の心と畏れを全部預けろ…」
後ろから、「若!? 拙僧はっ!?!?」という言葉が聞こえたが、知ったこっちゃねぇ。

その言葉と共に響華は目を閉じる。
数秒後、響華の身体から遠野の時と同じ事が起こった。
眩しい光が灰色の世界を照らし出すように身体から放たれる。
それはオレに寄りそう。
オレはそれを着物を纏うようイメージした。
光は収束し、着物の形が変わる。
耳が変化し尾が5本出ているのが判る。
そして周りに渦巻く蒼い炎。

みなぎる力。すげぇ力だ。

「すげぇ…力が漲って来るぜ。これが……響華、お前ぇの力なのか……?」

背中に暖かく寄り沿われる感じがし、心が満たされる。
何でも出来そうな気がする。
負ける気がしねぇ。
オレには、響華がついてる。

「響華がついてるから負ける気がしねぇ。…鬼童丸。覚悟しやがれ」

オレは不敵に笑うと鬼童丸に刀をつきだした。







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