オレの意志は決まってる
護りてぇのは、横に立って欲しいのは響華だけだ。

遠野に着くと晩餐の席で響華に会った。

攫って抱きしめてぇ……

それをぐっと我慢する。
盃をに口を着けていると身体が女に変化した淡島が話しかけて来た。

「せっかく遠野に来たんだ。ゆっくりしてけよな!」

そうはいかねぇ……。
恐山に祢々切丸を取りにいかねーと……。
いや、その前に赤河童に聞くことがある。

そう思いつつもオレは口を開いた。

「いや、オレは明日立つ。」
「ちぇっ、つれねーな。それじゃあ、また今回も背ぇ流してやらぁ」
「うらやましいギャバー! 淡島オレも入るぞー!」
「おめーはいらねぇよ!」

ゲシッゲシッと雨造は淡島から蹴りを入れられる。
喧騒を耳にしながらも、意識は赤河童の近くに座る響華に向かっていた。

響華に声をかけてぇ……
だが、なかなか声をかける隙がねぇ。
クソッ……

少しばかり焦っていると、ふいに口元をハンカチで拭かれた。

「リクオ君。口元にご飯がついてるわ」

響華の姉、月華だ。
オレは無言でそのハンカチを押し返す。
と、淡島が茶化すような口笛を吹いた。

「ヒューッ、こいつ誰だ? 響華とそっくりじゃねーか」
「月華様です! 響華様のお姉さまで、リクオ様の婚約者なんですよ!」

つららが意気込んで答える。
それにオレは苦々しく思いながらも否定した。

「オレは了承してねぇ」
「でも、もう奴良組全員が賛成してますよ!」

何を言っても無駄だ。
それ以上オレは言葉を発しない。
と、淡島がニヤリと笑った。

「へー。じゃあ、響華は貰っていいってことだよな!」
「そーだ。そーだ。リクオばっかずりぃ!」
「響華はオレのモンだ。」
「リクオ様! 月華様の事もお考え下さい!」

月華は苦笑し黙ったままだ。
と、響華が席を立った。

響華……!

話しかけるチャンス到来を逃す手はない。オレもスクっと立ち上がった。

「リクオ様、どちらに!?」
「どおした。リクオぉ!?」
「キヒヒッ、厠だ。厠だ。厠はあっちだギャバー」
「……」

オレは無言で皆を置いて広間を出た。
廊下の向こう。どこかの部屋に向かって響華は歩いていく。
心なしか沈んでいるようだ。
まるで、泣くのを耐えているような表情。

……っ
心が急く。一人で泣くんじゃねぇ。

オレは早足で響華に追い付くと肩をぐっと掴み、こちらへと振り向かせた。

「響華」

響華は目を丸くし、オレを見上げる。

「リ、クオ、君……。えっと、どうしたの?」

オレは肩を掴む手に力を込めた。







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