オレは全てを守りてぇ。

響華を天也から奪い取るように抱き締めると、何故かカナちゃんが路地の奥へと駆け出した。

なんで突然走り出したんだ?

「カナちゃん!」

呆気に取られているオレの腕の中で響華はそう叫ぶと、腕の中でもがき、後を追って走り出しそうになった。

「リクオ君、離して……っ!」

悲痛な声が胸を打つ。
が、オレは更に響華の身体を抱き締める腕に力を込めた。

響華はいつもカナちゃんと2人でいた。親しい友達だ。
追いかけてぇのは判る。
だが、響華を一人で行動させるわけにはいかねぇ……。

オレは自分が追いかける事を心に決めると、再び響華を天也に預けた。

「天也。響華を頼む…」
「君が勝手に響華を奪ったんでしょ」
「やっ、離してっ、カナちゃんっ!」

響華はカナちゃんを心配して、天也の腕の中で身体をもがかせる。
オレは宥めるように響華の頬に手を添えた。

「カナちゃんはオレに任せて、響華はここに居てくれ……。」

響華の黒い瞳が不安げに揺れる。
抱きしめたくなるほど可愛い。

だが、ここで抱きしめるわけにはいかねぇ。

オレは踵を返し、カナちゃんを追い、路地の奥へと駆け出した。

「リクオ様!? 待って下さい! 私も参ります!」

つららの慌てたような声が追いかけて来るが、オレは構わず走り続けた。
そして数分も経たずにカナちゃんに追いつく。
オレはその足を止めたくて声を上げた。

「おいっ!」
「あ……、え? リクオ、君……」

思惑道りオレの声にカナちゃんはこちらを振り返りながら足を止めた。
だが、オレを見るその目は泣き腫らした後のように真っ赤だった。

「カナちゃん。その目はどうしたんだい?」
「あ……。目にゴミが入っちゃって……。やだ、な…」

訝しげに尋ねると、カナちゃんは無理矢理笑顔を作りながら、赤くなった目を擦った。
そして深呼吸すると潤んだ目でオレをじっと見上げ、口を開いた。

「あの、その……、リクオ君は、もしかして響華ちゃんと……本当は……」
「?」
カナちゃんは何を言いてぇんだ……?

首を傾げているとカナちゃんの後ろから武器を携えた男達がゾロゾロとやってきた。

「カナちゃん早くこっちへ来るんだ!」
「リクオ様!」

「この化け物ぉ! か弱い女の子を泣かせやがって!」

追いかけてきたつららがオレの手を引くと同時に横から鉄パイプが振り下ろされた。
右横の細い路地からも野郎達が現れる。
野郎達はカナちゃんとオレ達を見比べ、ペッと唾を地面に吐き捨てた。

「女の子。オレ達に任せときな。化け物の奴良リクオはオレ達が殺してやっからよ!」
「けひひひ。硫酸ぶっかければ化け物にもいくらか効くだろ」

ジリ、ジリ、と近付いて来る人間達。

人間と戦うことなんか出来ねぇ……

オレとつららは少しずつ、後じさる。
と、突然後ろから大きな破壊音が響いた。

!?







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